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榊淳司「不動産を疑え!」

マンション“無価値化”時代到来か 売るなら今!タダでももらい手なし、すでに賃貸下落

文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト
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 マンションデベロッパーが東京や大阪の都心部で売り出された不動産を買うのは、そこに新築マンションを建てて分譲すれば売れるからである。逆に最近、彼らは郊外でマンション開発をしたがらなくなった。なぜなら、売れないからである。

 アベノミクスで景気が良くなったようなムードはあるが、郊外に住む若いファミリー世帯の所得は上がっていない。むしろ、公共料金や物価が上昇している分、可処分所得は減っている。建築費の高騰により、以前よりも高い価格でマンションを分譲販売しても、売れないのは当然である。

 さらに、団塊ジュニアの最後尾は40歳を超えた。郊外型マンションの主要なターゲットは30代のファミリー世帯である。彼らは物心ついた時から世の中が不況だったので、すこぶる堅実に生きている。築10年の中古マンションが新築の半額なら、躊躇なく中古を選ぶ。

 現在、東京都心におけるマンション市場はバブル化している。3年前に比べて実感として3割ほど価格が上がっているのだ。買っているのは主に相続税対策の富裕層と円安をフォローとした外国人。「自分で住むため」の需要ではない。

 バブルは必ずはじける。そうなれば、新築マンションは今ほど売れなくなる。そもそも、バブル化していない賃貸市場では、供給過剰による賃料値下がり傾向が顕著だ。

「最後の買い手」消失の危機

 都心で新築マンションが売れなくなれば、マンションデベロッパーは今までのように廃業や移転する中小企業の社屋、シャッター化した商店街のマーケット跡地を買わなくなるだろう。「最後の買い手」が消えるのである。

 土地神話がとっくに崩れた今、不動産の資産価値は、すなわち使用価値である。住宅やオフィスとして使用する価値がある物件に価格が付けられ、取引される。地方の郊外にある空家に値段が付かないのは、誰もそこを利用しようとは考えないからである。

 今後、バブルがはじけて都心の新築マンション市場が冷え込めば、「最後はこのビルを売って」と考えている中小企業経営者の期待が虚しくなる。今、まだ大都市の不動産にはマンションデベロッパーという最後の買い手がいる。この買い手がいなくなった時、東京や大阪といえども不動産無価値化の波に洗われることになりそうだ。

 だから、「売るなら今」である。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)

榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト

榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト

不動産ジャーナリスト・榊マンション市場研究所主宰。1962年京都市生まれ。同志社大学法学部、慶應義塾大学文学部卒業。主に首都圏のマンション市場に関する様々な分析や情報を発信。
東京23内、川崎市、大阪市等の新築マンションの資産価値評価を有料レポートとしてエンドユーザー向けに提供。
2013年4月より夕刊フジにコラム「マンション業界の秘密」を掲載中。その他経済誌、週刊誌、新聞等にマンション市場に関するコメント掲載多数。
主な著書に「2025年東京不動産大暴落(イースト新書)※現在8刷」、「マンション格差(講談社現代新書)※現在5刷」、「マンションは日本人を幸せにするか(集英社新書)※増刷」等。
「たけしのテレビタックル」「羽鳥慎一モーニングショー」などテレビ、ラジオの出演多数。早稲田大学オープンカレッジ講師。
榊淳司オフィシャルサイト

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