東京の衰退?
実のところ、東京に限らず日本では全国的に住宅が余っている。13年の総務省調査によると、全国の空家率は13.5%。東京でも約10.9%が空家になっている。
衝撃的な数字がある。「千代田区で約36%、中央区で約28%」。これは東京都の都心における賃貸住宅の空室率である。現状でも、東京都内では住宅の「数」は十分に足りていることを如実に表している。
一方、東京都が出している予測によると、五輪が開催される20年に東京の人口はピークに達する。そのあとはじわじわ減り始めるばかりではなく、どんどん高齢化する。さらにその10年後の30年には、住宅への需要とシンクロする世帯数も減り始める。つまり、五輪を境にして、東京の住宅は供給過剰がますます顕在化するのである。
不動産価格と五輪は直接関係ない。ただ、「五輪によって東京が繁栄する」というイメージが先行しているにすぎない。もちろん、イメージはとても大切だ。株式や不動産は「将来値上がりするだろう」という読みの元に買われる。現在、地域限定でバブルが起こっているのは、そのイメージが先行しているからだと推定できる。
しかし、もしそうだと仮定すると、五輪が終わるとどうなるのだろう。あるいは東京五輪が間近に迫って、その終わりを誰もが身近に予測できる時期になったとしたら。
大切なのは、「20年に東京で五輪が開催される」ということではない。冷静に考えなければいけないのは「20年には東京で開催される五輪とパラリンピックが確実に終わる」という慄然たる事実なのである。そのあとの東京には大したイベントは何もない。ただひたすら住む人が減り、高齢化していく大都市があるだけだ。
国が移民を認めるとか、2人目の子どもを産んだら500万円、3人目には1000万円のボーナスを支給する、などという大きな政策転換でもない限り、東京の衰退は確実である。
五輪は、わずか5年後である。5年はあっという間だ。あの東日本大震災から4年。来年の3月で丸5年だ。今、東京で不動産を買っている内外の投資家たちは、いったい何年先を考えているのだろう。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)