何より耐震性の高いマンションかどうかを確認
しかし、安いには安いなりの理由があります。建物の構造躯体、外観をはじめ、エントランス、エレベーター、共用廊下などの共用部分、住戸の室内の専有部分ともに老朽化が進行しています。それを買って、安心して快適に住めるかどうかを念入りに確認しなければなりません。
何よりも重要なのは、耐震性です。築30年が経過していると、耐震性に欠けるマンションが少なくありません。建築基準法における現在の耐震基準、いわゆる新耐震基準は1981年、昭和56年に施行されました。それ以降の建築であれば、原則的に新耐震基準を満たしているはずですが、長い年月の間にそれが損なわれている可能性があります。もちろん、新耐震基準以前の物件なら、なおさら慎重な確認が不可欠です。
購入したいという物件が見つかったら、まずは耐震診断を行っているか、その結果はどうか、耐震不足であれば耐震改修工事を行っているかどうかを確認しておかなければなりません。築深物件でも、新耐震基準後の建築であれば、耐震診断を行っていないケースもあります。そんな場合には、素人判断では見極めは難しいので、専門家にチェックしてもらうのが安心です。
中古マンションのインスペクション実施率は36.1%
最近では、中古住宅の売買時にはインスペクション(建物調査)を行うケースが増えています。インスペクションというのは、建築の専門家が実際に当該物件を見て、建物を評価するもので、それだけ安心感が高まります。
中古住宅の取引においては、引き渡し後に欠陥が見つかった場合に一定の補償を行う「既存住宅売買かし保険」といわれる制度がありますが、その利用に当たってはインスペクションが不可欠とされています。それとは別に、売主や買主が独自にインスペクションを行うこともあります。その両者を含めたインスペクションの実施割合は、図表3にある通りです。
中古住宅全体ではインスペクションの実施率は40.8%ですが、中古マンションはそれより低く36.1%にとどまっています。一方、中古一戸建ては52.9%と半数を超えています。それだけに、中古一戸建てには不安が大きく、マンションはさほどでもないと考える人が多いのかもしれませんが、油断は禁物。築深マンションを買うのなら、専門家のチェック、インスペクションは不可欠といっていいでしょう。
売主が事前にインスペクションを行っていたり、既存住宅売買かし保険制度を利用しているのなら、インスペクションの費用はかかりませんが、買主が独自にインスペクションを行うときには、まずは売主の許可をとって、自分でインスペクションを行っている設計事務所などを探して依頼する必要があります。その場合、会社にもよりますが、数万円程度の費用がかかりますが、安心のためには欠かせない負担といっていいでしょう。