日常の管理は十分に行われているかを自分で確認
築深物件だと、新築時には想定されなかったさまざまな問題が出てきます。たとえば、国土交通省が2018年度に実施した『マンション総合調査』では、次のような点が指摘されています。
1.マンション住民の高齢化が進み、1979年以前に竣工したマンションでは、世帯主が70歳以上のマンションが47.2%に達している
2.賃貸住戸のあるマンションは74.7%で、完成年次が古いマンションほどその割合が高くなる
3.空室があるマンションは37.3%で、完成年次が古いマンションほどその割合が高くなる
4.計画期間25年以上の長期修繕計画を立てて修繕積立金を設定しているマンションは53.6%で、25年未満の計画や計画がないマンションも少なくない
5.計画上の修繕積立金に対して、実際の修繕積立金が不足しているマンションは34.8%で、完成年次が古いマンションほどその傾向が強い
現地を見るときには空室率や賃貸割合などもチェック
現地を見学するときには、専有部の住居内だけではなく、共用部こそシッカリとチェックする必要があります。専有部はある程度のお金をかければ、リフォームできますし、場合によっては間取り変更まで含めて本格的にリノベーションすることも可能です。けれども、共用部に関しては自分だけの力では簡単に変えることはできません。それだけに、現状をキチンと把握しておくことが大切なのです。
特に、築30年以上の築深マンションだと、図表4・5にあるように、賃貸住戸が増えて、空室も増加します。あまりに賃貸や空室が多いと管理が十分に行われずに、住む人たちのコミュニケーションが希薄になり、マナーが低下して、トラブルが増加するリスクがあります。可能であれば、仲介会社の担当者や管理員などに空室率、賃貸割合などを聞いてみるといいでしょう。歯切れの悪い答えであれば、眉に唾をつけて聞いたほうがいいかもしれません。
実際に現場を見てみて、その雰囲気を感じとってください。特にゴミ置場、駐輪場などがきれいに整理整頓されているかで、管理状態や住民の民度を感じとることがきます。また、駐車場に停められているクルマを見れば、どんな人たちが住んでいるのか、ある程度のイメージをつかめるのではないでしょうか。
管理組合の活動についてもシッカリとチェック
さらに、築年数が長くなるほど、管理組合の活動状況に関しても十分なチェックが欠かせません。築深物件であっても購入する以上は、そこに20年、30年、場合によって永住する可能性もあるのですから、長期修繕計画を立てて、着実に実行されていることが不可欠です。その実現のためには、修繕積立金が大切になってきますが、先の国土交通省の『マンション総合調査』では、1世帯当たりの修繕積立金の月額は1万1243円です。ただし、築深物件では維持費が高くつきますから、修繕積立金も高くなる傾向があります。1979年以前の完成物件では、修繕積立金1万2184円、1980年~1989年では1万1254円となっています。これ以上の積立金であることを目安にしましょう。
管理組合の活動がシッカリしていないと、この修繕積立金の値上げができずに、積立金が不足しているところが少なくありません。やはり『マンション総合調査』では、長期修繕計画の実行に必要な資金に対して、積立金が20%超不足しているとするマンションが15.5%に達しています。築深物件では、積立金の延滞も増加します。特に、賃貸割合や空室割合の高いマンションほど、そんなリスクが高まります。さらに、確実に資金を確保するためには、5年ごとに計画を見直し、積立金の増額も図る必要がありますが、そうした活動が実施されているかも重要な点です。
こうした点は、管理員や仲介会社の担当者に質問しても、簡単には答えられないかもしれません。できれば、管理会社を確認してそこに質問を投げかけてみるぐらいの努力をしていただきたいものです。
ほんとうに賢い物件選びを行うためには、相応の努力が必要ということです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)