それなら、わざわざ口座をつくってまで、この制度を利用するメリットがあるのか? おそらく、メリットは本人たちより国や金融機関のほうにあるのだろう。
金融機関にとってみれば、お金持ちがわざわざ向こうから集まってきてくれるようなもので、ほかの金融サービスを売り込む機会にもなる。
非課税口座を開いたという情報は税務署に伝わるので、国にとっては「ここに資産家がいますよ」というお知らせも同然だ。これに、将来的にはマイナンバー(個人番号)の紐づけも済めば完璧というところだろう。
年間110万円までの贈与にも落とし穴
より気軽に利用できるのが「暦年贈与」だ。「年間110万円までは、贈与しても非課税」という話を聞いたことがある人も多いだろう。
ある人が贈与でお金をもらった場合、年間に受け取った金額から110万円を差し引き(基礎控除)、残った金額に贈与税がかかる。110万円までの贈与なら非課税となるのは、そのためだ。この枠を利用して、毎年または時々贈与することを、暦年贈与という。
この場合、贈与の相手は子供や孫などの直系親族でなくてもよく、配偶者や子供の嫁・婿でもかまわない。この範囲内で、学資保険の保険料を拠出するという方法もある。
ただし、気をつけなくてはいけないのが、「あげた」「もらった」という双方の意思が必要なことだ。よくあるのが、子供名義の口座をつくり、そこに年間110万円ずつ入金しているが、子供本人はそれを知らず、通帳もキャッシュカードも印鑑も親が管理しているというケースだ。
これは「名義預金」と呼ばれ、税務署から「贈与」と認められないことがある。形式自由の「贈与契約書」を2通つくり、贈与した側とされた側が署名捺印、それを毎年交わすというのが理想だが、通帳などの管理は子供本人が行わなければならない。
もし、親が「相続対策に、子供や孫の名義で預金しているから大丈夫」と言うことがあったら、必ず「それだけではNGだ」と伝えておきたい。なお、近年はこの暦年贈与を代行する金銭信託商品があるが、前述と同じ理由で利用するメリットは薄いだろう。
(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)
【※1】総務省「平成26年家計調査」
【※2】金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成27年)」
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