貯蓄1千万円以上の人はデビットカード愛用者が多い?高いポイント還元率やキャッシュバック
4月から新年度に入り、将来への希望にあふれる新人を迎えた職場も多いことだろう。しかしながら、日本経済の新年度は、先行きがあまり明るくはないようだ。
内閣府が発表する「景気ウォッチャー調査」(3月)の結果では、2~3カ月先の景気の先行きに対する判断指数が46.7と、前月を1.5ポイント下回り、景気横ばいを示す50を8カ月連続で下回った。
さらに、4月14日以降に発生した熊本地震は、今後の景気指数にも影響を与えるだろう。筆者の個人的な意見として、2017年4月の消費増税には赤信号がともりつつあるのでは、と思っていたが、この震災で10%への税率アップはさらに厳しくなりそうだ。
被災地の1日も早い復興をお祈りし、私たちにできる支援を考えていきたい。
現金派よりカード派のほうが、貯蓄額が高い?
景気先行きが不透明な中、ますます将来への不安が高まり、消費より貯蓄に走るマインドが強くなりそうな感があるが、ここに面白い調査がある。
ひとつは、昨年の調査になるが、株式会社ジェーシービーによる「キャッシュレスとデビットカード利用意向に関する実態調査」(15年3月)。もうひとつが、ビザ・ワールドワイドが今年2月に発表した「貯蓄賢者の買い物や貯蓄意識に関する調査」だ。
前者の調査結果は、簡単にいえば、「現金派よりキャッシュレス派のほうが、平均貯蓄額が高い」「特にデビットカードへの認知・関心が高い層は、インターネットバンキングやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をはじめ、オンラインサービスと親和性がある」というものだ。
また、「1000万円以上の貯蓄を抱える30代男女600名を対象に調査」したという後者では、「貯蓄賢者は『論理性』が高く、さらにデビットカード保有者は、より『計画性』に長けることが判明」と結論付けている。
各カード会社が“デビットカード推し”ということは、この調査結果を見ただけでも、よくわかるだろう。
「現金派よりキャッシュレス派のほうが、平均貯蓄額が高い」という結果については、筆者なりに意見がないでもないが、それは後回しにするとして、ここ最近、デビットカードの発行が花盛りなのだ。
デビットカードとは、それを使って買い物をすると、自分の銀行口座から即時決済してくれるカードのことだ。日本での利用は、J-Debit(ジェイデビット)というサービスが始まりで、金融機関で発行されたキャッシュカードを買い物などの支払いに利用できるというものだった。
支払いの際にカードを提示し、専用の端末に口座引き落とし時と同じ暗証番号を入力すると、自分の口座から即時に代金が引き落とされる仕組みで、通常のキャッシュカードさえあれば、新たなカード発行の手間もかからない。
しかし、思いのほか認知度が上がらなかった背景には、「どこで使えるのか、よくわからない」という問題もあったように思う。
今、ジェイデビットに代わって主流になっているのが、VISA、JCB、Master Cardなどの国際カードブランドを冠したデビットカードだ。ジェイデビットと異なり、各ブランド加盟店でクレジットカード同様に利用できるわかりやすさが売りで、ネットショッピングの決済でもクレカの代わりに使うことができる。
ファミマのTポイントが5倍になるカードも!
デビットカードの一番の特徴は、「即時決済」と「残高の範囲内でしか使えない」ことだ。
つまり、クレカのように使用と引き落としの時期にずれがなく、支出の管理がしやすいこと。残高以上の買い物ができないため、使いすぎを防げること。この2点が、「デビットカード保有者は、マネーリテラシーが高い」とされるゆえんだろう。
また、カード会社の事情もある。デビットカードは、銀行口座を開設しているおおむね15歳以上なら誰でも持つことができる。クレカのような審査がないため、非正規雇用が増え、クレカの申し込みに二の足を踏む若者層でも、これなら使えるというわけだ。さらに、残高の範囲でしか使えないということは、回収不能リスクもない。
余談だが、訪日中国人観光客が“爆買い”で使う銀聯カードは、実はクレカではなくデビットカードであることをご存じだろうか。中国で国際的なクレカが普及するまでには、まだ時間がかかるということだろう。
国際ブランド付きデビットカードには、各金融機関が続々参入している。メガバンクでは三菱東京UFJ銀行(VISA)、りそな銀行(VISA)、地方銀行ではスルガ銀行(VISA)、千葉銀行(JCB)、大垣共立銀行(JCB)などだ。
ネット銀行では、もはやデビット機能付きは当たり前で、ジャパンネット銀行(VISA、JCB)、住信SBIネット銀行(VISA)、ソニー銀行(VISA)、楽天銀行(VISA、JCB)、イオン銀行(VISA、JCB<予定>)などがある。
そのほとんどがキャッシュカード一体型で、現在のカードから切り替えが可能。ただし、金融機関によっては次年度以降に年会費がかかることもあるため、注意が必要だ。
付帯する主なサービスとして、クレカのようにポイントが貯まったり、年間など一定期間の利用額に応じて、0.2~0.5%程度のキャッシュバックがあったりする。
ユニークなところでは、まず、ジャパンネット銀行の「Visaデビット付キャッシュカード(ファミマTカード)」だ。デビット支払いでTポイントが貯まるのだが、毎週火曜・土曜にファミリーマートでの支払いに使うと、現金払いに比べてTポイントが5倍になる。りそなJALスマート口座の「りそなVisaデビットカード<JMB>」は、利用金額に応じてJALマイルを貯めることができる。
申し込む際は、各金融機関で横並びではない年会費やサービス面をよく確認したい。
海外旅行に最適!為替変動の影響ゼロのカード
なお、このところ急激な円高が進んでいるが、ゴールデンウイークに海外旅行を予定している人に利用価値大なのが、ソニー銀行の「Sony Bank WALLET(ソニーバンク・ウォレット)」だ。
海外で買い物をしてデビット決済する場合、ソニー銀行に外貨の普通預金口座を持っていれば、該当する口座から直接引き落としになる。例えば、米ドルでの買い物の代金は、自分の持っている米ドル預金から支払われるというわけだ。
一番のメリットは、クレカのように為替変動の影響を受けることがない点。ソニー銀行では、米ドルのほか、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドル、香港ドル、カナダドルなど、10通貨の預金が使える。
同様に、住信SBIネット銀行でも、事前に利用登録をしておけば、海外での米ドルの支払いに自分の米ドル外貨普通預金を利用できる。ただし、当然、預金残高内の支払いとなるため、事前に残高の確認をしておきたい(不足分は円預金からの外貨振替となる)。
デビットカードが隆盛を極める背景には、先に述べたように、クレカが持てない層へのアピールもある。逆に言えば、クレカを持つことができるのは、社会的信頼や収入面で一定のライン以上にあるということの証明だ。
「現金派よりキャッシュレス派のほうが、貯蓄額が高い」という調査結果については、「キャッシュレス派は、もともと安定した収入のある層だから」という見方もできる。そうしたラベリングにあまり左右されず、収入と支出を過不足なくコントロールすることが貯蓄の基本である、と付け加えておきたい。
(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)
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