保険ショップに広がる「重大な問題点」…顧客にとって不適切な生保商品提案も
私は有料相談専門のファイナンシャルプランナーとして毎日のように相談を受けているが、もっとも多い相談内容のひとつに、「生命保険を見直そうと保険ショップに相談したが、そこで受けた提案がよいのかどうかアドバイスがほしい」という、セカンドオピニオンの依頼がある。
保険ショップとは、保険の設計や販売を行う保険代理店の一種で、ショッピングセンター内や駅前などに店舗を構え、ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ったスタッフが無料で相談に応じるのが一般的である。大手の保険ショップはテレビCMも積極的に行っていて、今では多くの人が知る存在だ。
保険ショップの相談で起こっている変化とは?
保険ショップのセカンドオピニオン相談をしていて、実はこのところ気になっていたことがある。死亡したときの遺族保障として必要な金額、つまり生命保険の「必要保障額」の計算を保険ショップが行った形跡がないお客様が、以前より増えているのである。しかし、実際にその数を数えて検証まではしておらず、私の相談客は横浜市内在住が8割超と偏ってもいる。これが広く確実に起こっている変化なのかは確信を持てずにいた。
ところが先日、ある雑誌の記事で保険ショップに関する取材を受け、同時期にさまざまな保険ショップに調査員が相談した7つの事例の詳細を読む機会があった。そして、すべての事例で必要保障額の計算をした形跡がなかったのである。やはり最近では、必要保障額の計算をしないことも増えているとみて間違いなさそうである。
生命保険の必要保障額とは?
必要保障額の計算で標準的に行われている方法は「積み上げ方式」と呼ばれ、万が一のときに必要となる遺族の生活費と教育資金などとは別に必要になる資金の総額、つまり遺族の総支出から、遺族年金・勤務先の死亡退職金・現在の預貯金など当てにできる収入を差し引いて計算する考え方だ。この方法により計算される金額は、家族構成・これまでの収入・貯蓄額・生活状況などによって、一人ひとりまったく異なる。この計算を生命保険の商品提案をする前に行い、保障額の根拠とするのが適切な手順だろう。まったく同じ計算方法ではないとしても、何かの計算をしないで生命保険の保障額をどのようにして決めるのか疑問だ。