払う保険料総額が50万円近くアップ?高利回りで人気の「米ドル建て保険」改定の動き
新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的な景気の悪化は、海外金利の低下を招きました。3月にアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)がゼロ金利政策などの金融緩和策を発表したことで、保険業界では外貨建て保険の販売休止や保険料の値上げが取り沙汰されていました。すでに日本生命では3月16日から外貨建て保険の一部を販売休止しています。
そんななか、メットライフ生命、プルデンシャル生命(無告知型除く)、ジブラルタ生命の“ドル建て”保険が8月から保険料の改定を行う予定であることがわかりました。
保険料改定がやむを得ない事情
外貨建て保険とは、円で払い込んだ保険料を、米国ドル・ ユーロ・豪ドル、カナダドルといった外国通貨で運用する保険です。円で運用するより高い金利が期待されるとあって、近年、人気が高まっていました。今や種類も終身保険、年金保険、介護保険などとバリエーションも増えています。
もともとは外資系生保を中心に発売されていた外貨建て保険ですが、低金利時代に呼応して国内大手生保でも発売するようになり、各社ともに通貨の選択ができますが、主流は米国ドル建て保険のようです。
そもそも今回の米国ドル建て保険(以下、ドル建て保険)の保険料改定は予定利率の見直しによるものです。予定利率とは、一言でいうなら運用利回りです。このため同じ商品でも予定利率が高ければ保険料は安くなり、予定利率が低下すれば保険料も値上がりするという図式となります。
私見ながら世界通貨であるドル建て保険発売の一時休止や保険料改定の流れになるのは、やむを得ないと考えます。6月にFRBが金融緩和策の維持を決定したこと、新型コロナウイルスの終息宣言の兆しも見えず、また宣言されたとしても景気の回復が期待できないなどの背景を抱えているなか、保険会社の使命は業務を健全に運営し、お客様の契約を守り続けることにあるからです。
依然として高い利率
さて今回、少なくともメットライフ生命の「USドル建終身保険ドルスマートS」は8月1日から、プルデンシャル生命(無告知型除く)およびジブラルタ生命の米ドル建て商品は8月3日から料金改定を予定しています。商品によって若干差が出てくるでしょうが、筆者独自の調査では、総じて予定利率は現状よりメットライフは0.5%ダウン、他の2社は0.7ポイントダウンの2.5%前後に落ち着き、保険料は約2割の値上げになるのではと予測しています。
たとえば30代後半の男性が老後の資金づくりを目的に、死亡保障も兼ね備えたドル建ての商品を購入し、死亡保障を10万ドルに設定し、保険料払い込みを60歳までに設定した場合の現状の年間保険料が仮に約48万円だったとして、改定後の保険料は約57万6000円となる計算です。
もともと、この3社の予定利率は業界トップクラスと評判で、下がったとしても、予定利率が1%台の商品もあるなかでは依然として高い利率であることに変わりはありません。
しかしながら保険料のビフォアー・アフターでみれば、1割アップでも52万8000円となり、10年間支払った場合は保険料総額が48万円もアップとなります。このため、株の動きに敏感なお客様から、この3社の担当者に問い合わせが急増しているとの話も耳にします。
注意すべきは、外貨建て保険には当然、為替リスクが生じるという点です。こうしたリスクを防止するため、他社も含め円建ての保険にまったく加入していない人の契約は不可とする商品もあるということです。保険について右も左もわからないのに、目先の予定利率だけに釣られて契約するなということでしょうか。
また、ドル建て保険を発売しながら、保険料を改定するという情報がない会社もあります。最近ではカナダドルの運用商品で、安価な保険料の商品も人気があります。「今がお得」とばかりに目的もなく加入するのではなく、自分のニーズに一番マッチした商品を選択することが大前提であることはいうまでもありません。