目先の損より、将来の得を考えるべき
夫婦控除の詳細はまだ明らかになっていないが、井戸氏によると、直近でそれについて語られたのが、14年の税制調査会でのレポートだという。ここでは、
A:配偶者控除の廃止
B:配偶者控除の廃止と引き換えに、配偶者(妻など)が使いきれなかった基礎控除枠を納税者本人(夫など)に移転する「移転的基礎控除」の導入
C:夫婦控除の創設
が提案されている。ここに、さらに子育て支援の拡充を組み合わせるとする。
夫婦控除の説明として、夫・妻それぞれの基礎控除38万円に新たな控除枠を上乗せするイメージ図があるが、詳細はここでも語られていない。Cの解説にあるのは「配偶者控除に代えて、『夫婦世帯』に対し、若い世代の結婚や子育てに配慮する観点から新たな控除を創設する。新たな控除は配偶者の収入にかかわらず適用されることとし、働き方の選択に対して中立的な税制とする」という、もやもやした説明だけだ。
報道では、夫婦控除は18年の導入を目指して検討が始められる、とある。現在のところ、夫婦であれば控除の対象になるといわれているが、年収には上限が設けられる方向だ。しかし、専業主婦世帯には年代の高い層が多く含まれると考えられることから、すんなりと配偶者控除の廃止に進めるかは、大きな問題となるだろう。
井戸氏は「目先の損より、将来の得を考えるべき」と話す。「特に女性は、先に夫を見送り、最期はおひとりさまになる可能性も高い。働けるうちになるべく収入を増やし、自分で年金保険料を払って、少しでも将来の年金を増やしておくほうがいいでしょう」(同)
16年10月からは、一定の条件を満たすパート勤務者で年収106万円以上の場合は、年金保険料や健康保険料などを負担する必要が出てくる。政府にいわれなくても各家庭の働き方を改革する日は、遠くなさそうだ。
(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)
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