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非嫡出子の相続分を抑制&法的な妻と実子を優遇…自民党の「差別的」改正案が却下

文=横山渉/ジャーナリスト
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 丸山議員は、遺産相続は遺言重視にすべきと話す。

「長年連れ添って別れるにはそれなりの理由がある。家庭内別居もあるし、面倒くさいから離婚届を出さないという人もいる。個別事情によって判断したほうがよい。戸籍という形式だけで決めるのは家族主義的な思想が色濃く反映されており、実態にそぐわない。そもそも遺産の処分というのは、原則として個人の自由のはず」

 なお、2013年当時、西田昌司参議院議員らの差別的発言も批判された。自民党保守派は、形式的な法律婚による“伝統的家族”を守りたいとする人たちだが、日本も今やおよそ3組に1組が離婚するといわれる時代である。家族というものを、もっと柔軟に捉えるべきではないか。

実は内容豊富な相続法制改正

 法務省の相続法制ワーキングチームメンバーの1人、明治大学大学院法学研究科の村上一博教授はパブコメの内容と今後についてこう解説する。

「主な反対意見として、『被相続人財産の維持増加に貢献したのは法律婚配偶者に限らない(内縁配偶者や子どもの場合もある)のに、法律婚配偶者にだけ優遇策を講じるのはおかしい』、あるいは『3分の2という数字は合理的な説明がつかない』といった批判でした。賛成意見が少なかったため、法務省としては、法律婚配偶者の相続分の引き上げについては、これ以上検討することに消極的であるように感じられました」

 今回の相続法制の改正論議、きっかけは自民保守派による復古的な思惑だったが、実は試案の内容は以下のとおり多岐にわたっている。例えば、(1)居住権の新設、(2)寄与分制度の見直し、(3)相続人以外の貢献の考慮、などがそうだ。

(1)居住権の新設
 遺産分割によって高齢者が住みなれた家をすぐに追い出されないようにするために出された案で、生活保護的な意味合いもある。

(2)寄与分制度の見直し
 複数の子どもがいても、実際には一部の子どものみが親を介護しているケースが多い。それでも、今の相続制度では遺産は均等に分割される。しっかり面倒を見た人に、多く配分すべきという案がある。

(3)相続人以外の貢献の考慮
 現在の寄与分はあくまでも相続人に認められるもので、相続人以外の人が貢献しても遺産の分配を受けることはできない。たとえば、長男の妻が夫の親を介護しているケースは多いが、彼女の相続分はない。この不公平を解消しようという案だ。

 相続法制の改正が実現すれば1980年以来の大規模改正となるはずだった。30年以上が経って、核家族化と社会の少子高齢化はますます進み、家族のあり方が大きく変わってきた。相続はどの家庭にも起こるだけに改正の議論に注目する必要がある。
(文=横山渉/ジャーナリスト)

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