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――国が住宅バブルを引き起こし、それに乗せられた多くの会社員がローン返済に苦しんでいるという現状が、本書には詳しく書かれていますね。
荻原 ひどい話です。1997年にアジア通貨危機、北海道拓殖銀行の経営破綻、山一證券の自主廃業、98年には日本長期信用銀行の経営破綻が起きて、日本は不況に見舞われました。そこで、国が住宅バブルで不況を乗り越えようと、98~99年にかけて3つの住宅政策を打ち出したのです。
まず、建築基準法の要件を緩和して大量に住宅を供給できるようにしたこと。また、住宅金融公庫の住宅ローン金利を2%まで下げて低所得者でも大型ローンを組みやすくしたこと。さらに、マイホームを購入したときに税金が戻る住宅ローン控除を過去最大に大型化したことです。
この3つの政策で住宅バブルが引き起こされ、住宅ローンの返済額を最初の5~10年間は低く抑える「ゆとり返済」も、その流れに拍車をかけました。「家を買えよ!」「借金を背負えよ!」と国民の懐に手を突っ込んでくる政策でした。
――国税庁の調査によると、会社員の平均給与は97年がピークで年収467万円でしたが、その後下がり続けて、この数年は上向いていますが、2015年は420万円でした。ローン返済は依然厳しい情勢です。
荻原 会社員の平均給与が下がり続ける中、5~10年が経過したローンの返済額が一気にアップしたことで、行き詰まってマイホームを競売にかけられる人が激増する事態になりました。
――国が購入を煽ったことに加えて、マンション販売業者は、マンション価格や住宅ローン金利がどう変動しても、常に「今が買いどき」と言いますからね。
荻原 そうです。でも、販売することが彼らの仕事ですからね。それは仕方がないのではないでしょうか。
――本日は、いろいろと示唆にあふれたお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
(構成=小野貴史/経済ジャーナリスト)
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