また、「経費として認めてもらうためには領収書が必須」と思っている人も多いかもしれないが、領収書がなくても経費に認められるケースはある。
「ワリカンで食事をしたときなどは、誰かがまとめて支払いをすることが多いですよね。そうすると、全員には領収書が行きわたらない。このケースのように、やむを得ない事情で手元に領収書がない場合は、支払った金額などを書いた手書きのメモを残すだけでもいいのです」(同)
「税務署」と聞くと、つい身構えてしまいがちだが、グレーゾーンの経費を申告するだけであれば、法律に違反しているとは言えないため、罪に問われることはないという。
「ポイントは、グレーゾーンであっても『これは経費だ』という意思を強く持ち、職員に指摘されてもひるまずに交渉すること。この時期、確定申告会場にいる職員は非常に多忙です。そのため、こちらがゴネると面倒になって、案外見逃したりしてくれることもあります」(同)
強気な交渉は逆効果?税務調査=アウトではない
とはいえ、売り上げ1000万円以上をひとつの目安に、高い収入を得ている人の場合は比較的税務調査の対象になりやすくなる。しかし、松嶋氏によると、高収入の人でも、調査が入ったからといって必ず「アウト」になるとは限らないという。
「グレーゾーンの経費なら、明確な基準がないため調査が入ったときも交渉いかんで結果が違ってきます。たとえば、ある経費について『これはプライベートなものですから、経費になりません』と指導された場合、指導をそのまま受け入れるのではなく、『ほとんど仕事用で使っているから、9割は経費として認められませんか?』という具合に交渉することが大切です。
ただ、納税者や税理士のなかには、『私用だと思うなら立証してみろよ』と強気にゴネる人もいますが、これで通してくれる職員もいれば、かえって逆効果になるケースもありますので注意が必要です」(同)
税務署の職員といっても人間だ。納税者の態度によっても結果は大きく左右され、だからこそ納税する側の交渉が重要になる。
「グレーゾーンの経費を通すためには不正を一切やっていないことが大前提です。自営業者が売り上げを抜くような行為は、明らかにクロ。そんなことをすれば、職員に対して反論の余地がなくなります」(同)
昨年1年分の会計結果を税務署に報告する今年の確定申告期間は、3月15日まで。まだ申告していない人は、松嶋氏の語る方法を試してみる価値がありそうだ。
(文=喜屋武良子/清談社)