井戸美枝「100歳まで生きる 新しいお金との付き合い方」

年金、破綻説や「保険料払うの損」はデタラメである…障害年金や遺族年金もついている

「Gettyimages」より

老後の生活費、土台は「年金

 日本人の平均寿命は世界トップクラスです。厚生労働省の「平成28年簡易生命表」によると、女性の4人に1人が95歳まで、男性の4人に1人が90歳まで生存するとのこと。「人生100年時代」。まさにそんな時代がきていると考えておくほうがいいでしょう。

 寿命が延びた分、老後に必要なお金は増えます。本稿では、今からできる「老後対策」をご紹介します。

 と、述べましたが、すでに皆さんは「老後対策」の1つを実行しています。「公的年金」への加入ですね。年金は死亡するまで受け取れる、老後の生活費を支える土台のようなものです。

 年金というと、あまり良いイメージがないかもしれません。「少子高齢化で年金制度はもたないのではないか」「保険料を払うだけ損するのでは」と半ば諦めながら、保険料を支払っている(給料から天引きされている)人もいるのではないでしょうか。決して安くない保険料。不安になる気持ちはわかります。

 今回は、こうした誤解をときたいと思います。

年金制度はまずなくならない

『大図解 届け出だけでもらえるお金』(井戸美枝/プレジデント社)

 まずは「年金制度はもたない」という誤解です。

 年金は「賦課方式」といって、現役世代が納めた保険料を原資にして、年金の給付を行っています。また、国民年金(老齢基礎年金)の給付は、保険料からだけではなく、半分を税金で賄っています。極端な話ですが、税金や保険料を納める人がいる限り、給付が止まることはありません。

 少子高齢化の対策も行われています。「今年上半期のGPIFの運用益は〇〇円だった」というニュースを聞いたことはないでしょうか(ちなみに2017年度は約10兆円の運用益でした)。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、将来の年金給付に備えて、約160兆円の積立金を運用している組織。運用している積立金は、これまで支払われた保険料の一部を少しずつ蓄えてきたものです。

 この先、高齢者が増え、保険料を支払う人が減ったときに、この積立金の一部を、年金の原資として使う割合を増やします。2040年頃から本格的に取り崩し、以降100年間の平均で給付の1割を負担する予定です。

 いかがでしょうか。日本全体が再起不能になるような出来事が起こらない限り、年金制度は持続すると考えるのが自然です。仮に日本が大きなダメージを受け、経済活動が停滞した場合でも、年金の支給は優先的に行われると筆者は考えています。年金の支給を停止すれば、多くの高齢者が生活できなくなってしまうからです。もし支出を削減するのであれば、まずは生活への直接的な影響の少ない補助金やインフラ関連が対象となるのではないでしょうか。

年金は「保険」である

 次に、「損をするのではないか」という誤解です。

 支払った保険料分を受け取る前に死亡したら損をする、それはその通りです。早く亡くなってしまった場合は、支払った保険料の総額を受け取れない可能性があります。ですが、亡くなると、もうお金は必要ありません。年金の目的は、あくまで亡くなるまでの生活費を支えること。何歳まで生きるかわからないリスクに備える「保険」なのです。

 また、年金の支給額は、物価や賃金に合わせて調整されます。物価が上がれば、それに応じて支給額も上昇します(物価の上昇率より低く抑えられますが)。将来の物価の上昇リスクにも対応しているといえますね。物価が下がれば受給額も下がりますが、買うことができるモノやサービスの水準は保たれるでしょう。

 その他、年金には老後に受け取る「老齢年金」だけではなく、障害や死亡への保険機能もあります。障害を負ったときに給付される「障害年金」や、世帯主が死亡したとき遺族に給付される「遺族年金」です。

 上記の保障内容を知らずに民間の保険に加入している人は、必要以上に加入しているかもしれません。一度、障害年金と遺族年金について調べてみましょう。

フリーランスの人は注意!

 先述した通り、会社員は給与から保険料が天引きされています。天引きされる厚生年金の保険料には、国民年金の保険料も含まれています。65歳以降には、少なくとも2つの年金が受け取れます。

 注意が必要なのは、自分で保険料を納めなくてはならないフリーランスや自営業者の人。未納になると、老後の年金を受け取れないばかりか、いざというときの障害年金や遺族年金も受け取れません。

 さらに、会社員と違い、厚生年金には加入できません。受け取れるのは国民年金だけ。2018年度の国民年金受給額は、満額(40年間納付)でも年間77万9300円。月額にしておおよそ6万5000円です。年金の保険料を支払ったうえで、iDeCoや国民年金基金などに加入するといった対策をとる必要があります。

 これらの年金を増やす制度については、次回ご紹介します。
(文=井戸美枝/ファイナンシャルプランナー、執筆協力=瀧健/ファイナンシャルライター)

井戸美枝/ファイナンシャルプランナー

社会保険労務士  兵庫県社会保険労務士会会員
ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)日本FP協会会員
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
キャリアカウンセラー(GCDF)
産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、DCプランナー
行動経済学会会員
井戸 美枝オフィシャルサイト

Twitter:@mieido

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