盗難や災害にあったら、払う税金を安くできる!
「損害」と「損失」の額はこう決まる
先ほどの例は損失500万円として計算しましたが、実は被害にあったあらゆるものが対象となるわけではなく、損失の範囲はあらかじめ決められています。
まず、雑損控除の対象となる資産の範囲は、原則として被害にあった納税者本人もしくは生計をともにする総所得38万円以下の家族が持っている「生活に必要と認められる資産」に限られます。そのため、趣味娯楽で保有する別荘などの不動産は雑損控除の対象とはなりません。また、ひとつ30万円を超える貴金属や絵画、骨董品といったものも認められていません。
次に損害の金額ですが、「現金を500万円盗まれた」ということであればその被害にあった金額である500万円が損害金額となります。しかしながら、住宅や家財などの資産については計算が少し複雑です。住宅、家財などの資産については、(1)損害発生直前の資産の時価、または、(2)資産の簿価(取得してから通常使用して価値が減ったあとの金額)のいずれかを選択し、損害発生直後の資産の時価と比較をして損害金額を計算します。
たとえば(1)の時価を選択した場合、その資産の損害発生直前の時価が1000万円、損害発生直後の時価が600万円だとした場合、損害金額は400万円(1000万円-600万円)となります。
そして、実際に税金を計算するための「損失」の金額は、「損失=損害金額+災害時に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などにより補てんされる金額」と計算します。
つまり、災害により損壊した住宅の修繕などで支出した金額も損失金額に加えることができますので、修繕にかかった費用の領収書などは捨てずに取っておきましょう。災害のやんだ日の翌日から1年以内に支払った原状回復費用や、損壊した自宅の除去費用などの費用も、災害関連支出として損失金額に含めることができます。
一方、火災保険などに加入していて保険金による補てんがある場合には、損害金額からその保険金の額を差し引いて損失金額を計算しますので注意してください。
あとからでもあきらめないで!
盗難にあってから何年もたってしまった……。そんなときにも諦めないで申告について検討してみてください。確定申告は5年以内であれば遡ってすることができます。会社員の場合は年末調整で一度税金を計算して納めているので、税金を還付してもらうために確定申告をすることになります。盗難にあった年にはそれどころではなかったという場合でも、5年以内であれば確定申告が可能です。
亮子「こうした救済措置があるということ。あらためて勉強になりました」
啓子「実際に被害にあったら、確定申告どころじゃないかもしれないですけれど……」
亮子「5年以内に今回の話を思い出してもらえたら嬉しいですね」
啓子「はい。それから、災害の場合には、災害減免法による所得税の軽減免除という制度もあって、今回説明した雑損控除と有利な方を選択できます」
亮子「では、その点は次回に!」
(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)