世界中で新型コロナウイルスの感染が広がり将来への不安が増大するなか、将来に備えて投資を始めたいという人が増えています。とはいえ、実際に始めるとなると、たくさんある投資商品のなかから何を選んだらよいのかわからないというケースが多いようです。そこで、今回は資産運用を始める際の投資商品を選ぶ順番についてお話します。
つみたてNISA・iDeCoは上限金額までを目指す
投資初心者が投資をスタートする際に、まず始めたいのが「つみたてNISA」です。
つみたてNISAは少額からの「長期・積立・分散投資」を目的とした非課税制度です。年間40万円までの投資金額から得られた運用益が非課税になります。対象商品は長期の積立・分散投資に適した投資信託に限定されており、販売手数料はゼロ、信託報酬も安いので投資初心者にも安心です。資金はいつでも引き出せるため、柔軟に使うことができます。
つみたてNISAはネット証券などでは100円から投資することができます。最初は、投資の経験を積む意味でも無理のない金額で始め、上限金額になるまで増やしていきましょう。つみたてNISAの年間の投資上限金額は40万円ですから、月額にすると3万3000円です。
つみたてNISAの投資上限金額に達したら、次は並行してiDeCoもスタートするとよいでしょう。iDeCoは、自分年金をつくる制度として注目されている制度です。毎月一定金額を積立で運用し、運用の成果次第で将来受け取る金額は増減します。つみたてNISAと同様、運用益は非課税。さらに、その年の掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税・住民税の節税効果が期待できます。ただし、基本的には60歳以降にならないと引き出すことができないので、ライフプランが変化しやすい若い世代の方は、いつでも引き出すことができるつみたてNISAを優先するとよいでしょう。
iDeCoは働き方などにより掛け金の上限金額が違いますが、つみたてNISAもiDeCoも、一般の私たちが中長期的かつ安定期にお金を増やす3つのポイントである「長期」「積立」「分散」投資ができるうえ、ほかにはない非課税のメリットが生かせる制度です。堅実にお金を増やしていくなら、まずはこれらの制度を上限金額まで利用するのがオススメです。
つみたてNISA・iDeCoの次の投資先の候補は?
つみたてNISA・iDeCoを上限金額まで投資したら、ほかの投資について検討しましょう。つみたてNISAとiDeCoをフル活用した次は、課税口座での投資信託積立、個別株や債券への投資、FIREを意識した高配当株、ETFへの投資などに進むとよいでしょう。
今回は、次の投資先候補のなかから3つ紹介します!
(1)通常の証券口座で投資信託積立
通常の証券口座で投資信託を積み立てる場合、つみたてNISAやiDeCoのような税制優遇の恩恵を受けることはできませんが、通常の証券口座で投資信託を行うメリットもあります。
つみたてNISAの商品は金融庁の基準をクリアしたものに限られますが、投資信託積立でラインナップされている商品はバラエティに富んでいるので、幅広い投資先から選択することができます。
老後資金は税制優遇の恩恵を受けながら安定的に運用できるつみたてNISAやiDeCoで、旅行など趣味を楽しむためのお金は積極的にリターンを狙って「投資信託積立」でという具合に目的別に使い分けるとよいでしょう。
(2)米国株
コロナ禍で世界経済が足踏みするなか、米国の株式は好調をキープ。また、米国にはグーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフトなど、世界経済を牽引する巨大テクノロジー企業が集中しており、世界経済を牽引しています。
グーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフトなどは、世界の時価総額ランキングで上位を占める企業でもあります。時価総額が大きい企業は、増資や巨額な資本で人材獲得や企業買収、設備投資などを大規模に行えるため、さらなる高い成長を期待することができます。つまり、米国株は低リスクで長期的に投資がしやすい企業が多いということ。ですから、米国株は初心者でもトライしやすいといえるでしょう。
また、最近話題のFIRE(経済的な自立と早期リタイア)を目指す人は、不労所得を得るために高配当株(配当金の高い銘柄)・連続増配株(配当金を毎年増やしている銘柄)を買っています。ここでも注目は米国株です。というのも、米国株のなかには日本株よりも高配当の銘柄、連続増配を行う銘柄があるからです。なかには、60年以上増配している企業もあるほどです。こうした配当金を毎年増やす銘柄を持っておけば、お金も堅実に増やせる可能性が高まります。
(3)米国株ETF
自分で高配当株を選んで投資するのはハードルが高いという場合には、高配当株に投資しているETF(上場投資信託)を利用する手もあります。
ETFとは、証券取引所に上場している投資信託のことです。上場しているので、株式と同じようにリアルタイムで取引できるところが特徴です。一般的にETFは、少額から投資することができ、一般の投資信託と比べて取引手数料やその他のコストが安く設定されています。
配当金がたくさん受け取れる配当利回りの高い銘柄は、米国株に多い傾向にあります。たとえば、バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)やiシェアーズ・コア米国高配当株ETF(HDV)、S&P500高配当株式ETF(SPYD)など、米国の高配当株に投資しているETFに投資してみるのもよいでしょう。ETFは、1本買うことで数十・数百の銘柄に投資するのと同じような効果を得ることができます。加えて、年4回の配当金が受け取れます。定期的に分配金を受け取ることができれば、相場が悪くなったときでもモチベーションが保てるでしょう。
大事なのは資産の基盤を築いて、次の投資に進むこと
今回は、資産運用に取り組む際にどの投資商品からスタートしたらよいのか、その順番についてお話ししました。
大切なことは、まず、長期・積立・分散投資で資産の基盤を築きながら、次の投資へ進んでいくことです。最初から、短期間でまとまったお金を得ることを目標にした投資をしないのも重要です。
千里の道も一歩から。少額からでもよいので、今から着実な資産形成を始めてみましょう。
今回は主に資産形成についてお話ししましたが、これからの時代はお金に関する幅広い知識を身につけることが大切です。今回ご紹介した内容も含めて、拙著『はじめてのお金の基本』(成美堂)で、家計管理の基本から節税の知識、ライフイベントにかかるお金、保険の知識、資産運用の知識に至るまで幅広いお金の知識を豊富な図版やマンガを用いてわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
(文=高山一惠/ファイナンシャル・プランナー)
『はじめてのお金の基本』 頼藤太希/高山一恵 著
はじめてお金の本を読む人にも理解できるよう、家計管理の基本、節税の知識、ライフイベントにかかるお金、保険の知識、資産運用の知識に至るまで、幅広いお金の知識をオールカラー、豊富な図版やマンガで解説