通常の投資信託の運用方法は、パッシブ運用とアクティブ運用の2種類がある。パッシブ運用は目標(ベンチマーク)を定めて、目標と同じ値動きをするように運用を行っていく。簡単に説明すると、日経平均株価が目標であれば、日経平均に採用されている銘柄をすべて購入することで自動的に連動していく仕組みだ。
また、アクティブ運用は、目標を上回る積極的な運用を目指す方法をいう。日本株であれば、いずれのタイプも日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などを目標としており、いわば市場全体の動きによって、相対的に運用成績が決まってくるわけだ。株式市場の全体の運用成績が下落するのであれば、一緒に下落するし、反対に上昇するのであれば当然上昇することになる。
一方、「絶対収益追求型」投資信託の場合は、目標に対する相対的な収益を求めるのではない。株式市場が上がるのか下がるのかに関係なく、投資元本に対して常にプラスの成績を追求する。これを一般的に「絶対収益追求型」と呼んでいるのだ。あくまでも“追求する”という意味であることに注意をしてほしい。
●絶対収益追求型投資信託が登場した理由
従来型のパッシブ運用のデメリットは、目標とする指数がマイナスの場合、必然的にその投資信託の収益もマイナスとなるという点だが、実はその投資信託自体の運用成績は「良好」となる。というのも連動すること自体を目標として掲げているからだ。「目標が下がれば自分も下がる、目標が上がれば自分も上がる」ことが大切であり、マイナス運用であっても成功だとみなされる。
運用成績がマイナスにもかかわらず、「運用が成功した」といわれても違和感を感じるのが一般的だろう。こうした違和感を解消するのが絶対収益追求型の投資信託だ。目標や指数の上昇や下落にはまったく関係なく、投資した元本に対して収益がプラスになるような運用を行っている。
具体的な手法は、株式を購入するだけでなく、「空売り」と呼ばれる、実際に保有していない株式を売却する戦略を取る。購入と売却を組み合わせることによって、市場の動きにかかわらず儲けを狙っていくのが、ヘッジファンドの運用手法の中で最も一般的な「株式ロング・ショート戦略」というものだ。
このような手法は債券や株式といった伝統的資産との相関(連動性)が低いため、従来型の投資信託と組み合わせることで運用資産全体のリスクを低減させることができるといわれている。もちろん、リスクがなくなるわけでも、絶対に収益が狙えるわけでもなく、あくまでも運用する金融商品のひとつであることを肝に命じるべきだ。
(文=横川由理/ファイナンシャルプランナー)
・ロング戦略 1万円で株式を購入:株価が上昇すると、収益が出る。
・ショート戦略 1万円で株式を売却:株価が下落すると、収益が出る。