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しかし、割安・掛け捨て生命保険を勧めていても、貯蓄性のある終身保険等を否定しているわけではないことに注意してほしい。単純な対立構図ではないにもかかわらず、早合点して、既加入の終身保険を定期保険に乗り換えてしまう人も後を絶たない。
終身保険等の保険料は確かに割高だが、保険期間の経過に伴い、解約返戻金が増えていく。よって、解約を前提にすれば戻りの分があるだけ、保険期間のある時期を境に割安・掛け捨て定期保険よりも実質的な保険料は安くなる。途中で保険金額の減額を検討しやすいのも、実は終身保険である。さらに保険料払込満了以後の解約返戻金は、おおむね既払込保険料総額を超える。定期保険の場合は、保険料が安くても戻ってくることはないので、終身保険との保険料差額相当を積立運用し、老後資金と老後の死亡保障の両方を貯める工夫をしなければならない。
前述のように、老後も一定の死亡保障を備えるのが賢明である。従って、実際は契約そのものを解約することは勧めないが、終身保険であれば適宜、一部解約して現金化していく選択肢も選べる。また、商品によっては死亡保障から介護保障等に変更できるものもある。終身保険と割安・掛け捨て定期保険とは、その商品性も活用方法も異なるのだから、バランスを考えて併用していくことが望ましいのだ。
保険を見直し、保険料を落とすということは、保障の質を落とすことにほかならない。その保障とは、抜き差しならない深刻な事態に対処し得る最後の砦である。保険料という一面だけを重視して質を落とし、そして後悔された方を多く見てきたからこそ、読者の皆さんには慎重になっていただきたいと切に願う。
(文=井上信一/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会)
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