アルジェリア、なぜ人質救出ではなく軍事作戦に踏み切ったのか ー 日経ビジネス(1月22日)
危機管理セキュリティ会社G4SJapanの元取締役で、国際政治アナリストの菅原出氏にインタビューを行った本記事。
北アフリカでは、イスラム過激派の脅威が数年前と比べて格段にアップ。2010年〜11年にかけて起こった「アラブの春」によってエジプトやリビアの独裁体制が崩壊した一方で、独裁体制が押さえつけてきた過激派が解放されてしまった。リビアのカダフィ政権は、独裁政権でありつつ、アメリカに協力して国内のアルカイダ系武装勢力を弾圧してきたのだ。
独裁政権から開放され、自由を手にした過激派。さらに、独裁政権が抱えていた武器が武装勢力の手に渡ってしまったことにより、組織の戦闘力は向上する。これによって従来のゲリラ戦や自爆テロといった戦い方から、警備体制が敷かれた施設内への襲撃が可能となった。今回の人質事件はこのような背景のもとに発生した。
では、このイスラム過激派の襲撃に対し、なぜアルジェリア政府は強硬姿勢に出たのだろうか?
冷戦期からソ連の支援を仰いできた同国。911以降アメリカとの関係を修復させるも、現政権はカダフィ政権と近い関係にあったことから、リビアに介入した西側諸国には不信感を強めていた。このバックグラウンドに加え、イスラム過激派の急拡大を抑えるため、事件の長期化と拡大を防ぎたいという政府の思惑が重なる。その結果、アメリカやイギリスなどとのすり合わせを行わず、軍事行動に出たのではないかというのが菅原氏の見立てだ。
マリとアルジェリアの危機:サハラの聖戦 ー JB PRESS(1月21日)
さらに、この事件を把握するためには隣国マリの動きを抑えなければならない。
アルカイダと繋がるイスラム過激派の勢力が急拡大し、国土の半分が支配下に収められてしまったマリ。今年に入って、過激派が首都バマコを脅かすまでに至ったことから、1月11日にフランス政府が爆撃を開始。今回の人質事件はこの空爆に関連した動きであるという見方がなされている。
2012年にサノゴ大将がクーデターを起こして以来、マリ政府軍は弱体化の一途をたどっており、単独で反政府勢力に対応できる力はすでにない。本記事によれば、マリ国民はフランス軍の介入を歓迎しているが、一方で政府を信頼している国民はほとんどいないという。昨年末には首相が解任され、暫定大統領も無力の状態。この混乱が解決されない限り、アルジェリアに続くさらなる悲劇が発生してしまうかもしれない。
アルジェリア事件と石油開発のリスク ー ナショナル・ジオグラフィック(1月21日)
本記事の表現するところでは、アフリカは「世界に残された数少ない“エネルギーフロンティア”」であり、石油産業が空前の成長を遂げている地域。なかでもアルジェリアはアフリカ第四位の原油産出国であり、この地域では比較的力の強い国家だった。
アルジェリアの政府歳入の60%、GDPの1/3を占める石油と天然ガスが、同国経済の大部分を占めている。しかも、国内資源のほとんどは未開発とみられており、政府では新たな投資誘致を試みている最中だった。
石油掘削技術が進歩したことで、アルジェリアの砂漠地域や、ガーナ、モザンビークの沖合などでも地下探査は進んでいる。カリフォルニア大学デービス校のエイミー・マイヤーズ・ジャフィ氏は「より効果的な資源開発技術が登場しており、そのうえビジネス的にも他地域より好条件が期待できる。こうした要素が合わさって、アフリカはエネルギー開発の人気スポットになっている」と解説。人質事件によってテロのリスクが顕在化しても、エネルギー業界のアフリカへの関心が薄らぐことはないと本稿を結んでいる。
アルジェリア事件で日揮株は軟調地合い ー Japan Real Time(1月22日)
今回の事件を受けて大きな打撃を受けた日揮。有望な社員を失ったばかりでなく、アルジェリア国内でのプラント事業を全て中断し、先行きも不透明となってしまった。
公共事業の強化を打ち出す自民党が政権を獲得したことに伴い、これまで好調な推移を見せていた日揮株。2012年4-9月期の連結営業利益も前年同期比4.8%の321億円と好調だったものの、人質事件が発生したことによって、株価は下落傾向となっている。また、事件のあおりを受けてアルジェリアで高速道路建設を進めている大成建設株も下落。新興国への進出リスクが露呈した今回の事件を受けて、事業計画の見直しに迫られる日本企業は少なくない。