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清少納言や紫式部の時代は、国風文化の最盛期といわれる。以前は、それまでの唐風文化が、遣唐使の停止によって10世紀に純然たる日本文化である国風文化に変化したと説明されていた。しかし現在では、この見方はほぼ否定されている。すでに述べたように、大陸からの唐物は遣唐使停止後も、民間交易によって盛んにもたらされていたからである。
菅原道真の建議を受け、朝廷が遣唐使の派遣を見送ったのも、遣唐使のような危険で経済的負担の大きい使節団に頼らなくても、民間交易で大陸からの文物や情報の流入が確保されていたからだ。
国文学者の河添房江氏は、国風文化について「鎖国のような文化環境で花開いたものではなく、唐の文物なしでは成り立たなかった文化」と述べるとともに、「唐風の奢侈品(贅沢品)を享受する環境にあって醸成された文化」(『唐物の文化史』)と指摘する。
十二単(じゅうにひとえ)の色づかいが来年の東京五輪のデザインに利用されるなど、平安時代の文化は日本の美や美意識を象徴するものとしてしばしば語られる。けれども純粋な日本文化であるかのように見える平安文化は、交易を通じた海外文化の影響なしでは成立しなかったし、高級な舶来品を買いあさる貴族や富豪の物欲に支えられてもいた。
平安文化のように魅力ある文化を未来に残したいのであれば、グローバルな貿易を関税引き上げなどで阻害しないことはもちろん、高級ブランド品の爆買いを蔑んだりしない、おおらかさが必要だろう。
(文=木村貴/経済ジャーナリスト)
<参考文献>
佐藤信編『大学の日本史 1.古代―教養から考える歴史へ』山川出版社
宮崎正勝『「海国」日本の歴史: 世界の海から見る日本』原書房
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