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ビジネスマンを惑わす、自己啓発のウソ・ホント 第2回

一ダンサーだったFATIMATAは、なぜEXILEと共演する一流になれた?

文=鈴木領一/コンサルタント

一ダンサーだったFATIMATAは、なぜEXILEと共演する一流になれた?の画像1サイト「FATIMATAの“Tangana World”」より
 出版不況の最中、堅調な売り上げを続けているのがビジネスマンなどに向けた「自己啓発本」というジャンル。「成功するための秘訣」が収められた本を繰り返し読んでは、いつまでたっても成功しない自分に不甲斐なさを感じている人は少なくないはずだ。変わらない自分のどこに問題があるのか?

 そこで、自己啓発理論を研究しつくしたビジネス・プロデューサーの鈴木領一氏が「自己啓発」「能力開発」の本質をレクチャー。話題の最新刊『100の結果を引き寄せる1%アクション』のエッセンスを交えながら、「自分が求める成果を出すために、本当にやるべきこと」をお伝えする――。

 前回、「ポジティブ思考が成功を導く、のウソ」というテーマで、ポジティブ思考が必ずしも成功を導くわけではないことを書きました(前回記事参照)。「潜在的思考=フレーム」が常にポジティブ思考よりも優位に働くため、フレームを変えない限り、ポジティブ思考も効果を発揮できないのです。

 今回も自己啓発本でよくみられる「あっという間に自分が変わる」ということが本当にあるか、というポイントについて解説したいと思います。

 結論は、もちろんNOです。厳密にいえば、条件付きでNOです。

 人が急激に変わってしまうことは現実にあります。しかし、極めてレアケースです。例えば、事故に遭ったとか、大病を患ったというケースです。

 人は予期しない大きな出来事が起きると、これまでの思考習慣を強制的に変えざるをえなくなります。私の知人で心臓の大手術をした後に、別人のように性格が変化した人がいますが、この知人のケースがまさにレアケースに当たります。

 しかし、ほとんどの人にとって予期せぬ出来事を自分の意志で起こすことはありえないわけで、急激に自分を変化させることはできないのです。

「自分を変える方法」はあるのか?

「電力の鬼」といわれた実業家・松永安左エ門は、次のような名言を残しています。

「大成するためには、長い闘病生活、長い浪人生活、長い牢獄生活の三つを経験しなければならない」

 大きな逆境を体験すれ、それを乗り越えれば人として大きくなる、ということを松永安左エ門は述べたわけです。確かにこれらの逆境は人を大きく成長させてくれます。

 一代で売上1兆円を超える企業グループを形成したCSK創業者の故・大川功氏は、大学を卒業後に結核にかかり8年間も療養生活を余儀なくされました。毎日寝てばかりで地獄のようだったそうです。当時は絶対治らないといわれた病気でしたが奇跡的に回復し、その後、8年間の悔しさから、自分の可能性をすべて試すように何でもどん欲に挑戦しはじめます。そして紆余曲折を経て、42歳の時にCSKを創業したのです。

 大きな逆境は形を変えた祝福といえますが、多くの人にとってそれを待つわけにいきません。ましてや怪しげな自己啓発本に書かれているように「一瞬で変わる」ということはありえないのです。もし本当なら、大変危険な方法です。

 では「自分が変わる」方法はあるのでしょうか? それに対しての答えはYESです。あっという間に変わるという方法ではなく、ゆっくり変わる方法があります。それが1%アクションです。

 前回ご紹介した「フレーム」は、私たちの思考の奥底=潜在意識レベルで発動しているため、ほとんどの人はその存在すら自覚することはできません。毎日会社に行くというフレーム、同僚が会社に残っているから残業するというフレーム、会社を辞めたら生きていけないと考えるフレームなど、あなたを無意識に縛るフレームは無数で、一つのフレームを変化させても、関連するフレームが元に戻そうと働きかけ、あなたを昨日と同じあなたにとどめてしまいます。

「私は会社を辞めても成功できる!」とポジティブ思考で自分に言い聞かせようとしても、辞めたら生きていけないと考える「フレーム」や独立したらみんな失敗していると考える「フレーム」などが、知らず知らずのうちにあなたを縛るのです(フレームのメカニズムやフレーム全体に影響を与えるコア・フレームについては拙著『100の結果を引き寄せる1%アクション』の解説に譲ります)。

 これらのフレームを自分の意のままにコントロールする方法があります。その方法は大きく分けて2つありますが、その中の一つを今回ご紹介します。それが1%アクションです。

EXILE共演ダンサーを成功に導いた1%アクション

 1%アクションとは、私が10年ほど前から提唱している方法で、すでに多くの実績を出している現実的な手法です。一日の中でほんの僅かな時間と労力でできる範囲の行動のことを1%アクションと呼んでいます。

 一日24時間の1%はどれくらいか分かりますか? 答えは15分弱です。一日15分弱でできることを目安にしても良いですし、1000個の英単語を覚えるのにその1%=10個を目安にしても良いでしょう。メールを一通出す、本を一冊買うも1%アクションです。1%はあくまでも概念的な記号ですので厳格な計算にこだわる必要はありません。わずかな1アクションを実行することが1%アクションです。

 1%アクションには条件があります。それは「心からやってみたいことをやる」です。ですから、仕事でやっているToDoリストのような概念とは全く異なります。仕事のToDoは「やらなければならない」というフレームで行なっているアクションです。1%アクションは「やってみたい」というフレームで行うアクションです。

 1%アクションをやればやるほど、あなたの潜在意識に「私はやってみたいことをやれる」フレームが形成されていくようになり、やればやるほど大きな力を持つようになります。したがって時間をかけて1%アクションを行うことが重要なので、「1週間で劇的にあなたが変わる」ということはありません。しかし、時間をかけて確実にあなたに劇的な変化をもたらします。一つの実例をご紹介しましょう。

 拙著『100の結果を引き寄せる1%アクション』でも体験者の声といて掲載させていただいているダンサーのFATIMATA(ファティマタ)さんの実例です。

 一ヒップホップのダンサーだったFATIMATAさんは、ある時にアフリカンダンスに興味を持つようになりました。FATIMATAさんはヒップホップの源流にアフリカンダンスがあることに気づき、それを習得したいと考えたのです。しかし、2000年当時、日本国内で紹介されるアフリカンダンスは日本人ダンサーが我流で教えているものがほとんどで、本物を学ぶ機会はありませんでした。FATIMATAさんは意を決してセネガルに行き、そこで本物のアフリカンダンスを見て衝撃を受けます。これを日本にも伝えたい!と心から思ったFATIMATAさんは、現地のダンサーの踊りをビデオに収め、帰国後その映像をDVDに焼いて日本ダンス界の教師たちに手渡しで伝え始めます。まさに1%アクションです。

1%を続けられた者が「勝つ」

 FATIMATAさんは純粋に本物のアフリカンダンスを知ってほしいという思いだけでこの1%アクションを続けていったのですが、そのうちにこのDVDが口コミで伝わり始め、勝手にDVDがコピーされて流通始めたのです。

 そしてついに大きな転換点が訪れます。EXILEのUSA(ウサ)さんにDVDが伝わり、その衝撃的な映像に魅せられたUSAさんがFATIMATAさんにコンタクトを取ったのです。その時にはFATIMATAさん自身もアフリカンダンスの第一人者として活躍するようになっており、USAさんはアフリカンダンスを伝える企画をFATIMATAさんの協力のもと行うことになりました。2012年にはNHKでEXILEのダンス番組が企画され、その時にはFATIMATAさんがアフリカンダンスの世界的スターを日本の招集しEXILEとの共演を実現させました。

 今ではFATIMATAさんの企画するセネガルダンスツアーがセネガル国営放送でも取り上げられ世界的にも知られるようになりました。名実ともにアフリカンダンスの第一人者となったFATIMATAさんですが、そのスタートは、誰にも知られることのないたった一人の1%アクションだったのです。

 1%アクションは、誰でもできるほど簡単な手法です。しかし、多くの人が「そんな簡単なことで変わるわけがない」と言って、1%アクションすらしません。だから1%やった人が結果的に勝つのです。一日1%成長したとしたら、1年でどれくらいになるか簡単に分かる計算があります。1.01の365乗です。答えは約38になります。一日1%成長しつづけると、一年後には38倍になるのです。

 あなたが自分を変えたいなら、「あっという間に変わる手法」よりも1%アクションを選んでください。それがもっとも確実で、結果的に最短距離となるのですから。(つづく)

鈴木領一/コンサルタント

鈴木領一/コンサルタント

 思考力研究所所長。行政機関や上場企業の事業アドバイスをはじめ目標達成のためのコーチングも行っている。プレジデント誌などビジネスメディアへの記事寄稿多数。また100の結果を引き寄せる1%アクション(サイゾー刊)は、氏のコーチングメソッドを初公開した書籍で、主婦から経営者まで幅広い層に支持されロングセラーとなっている。また、出版プロデュースの活動も行い、代表作には小保方晴子氏の『あの日』(講談社刊)がある。

Twitter:@suzuryou

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