「コンピュータ、英語、会計のスキルを身につければ、仕事に困らない」時代が終わりを迎えている。いまや公認会計士や税理士でさえ、収入が厳しい状況にあるという。エクセルや会計ソフトによる仕事の自動化が進み、アジアへの会計業務の外注増加を背景に国内の仕事量自体が減り、その結果、報酬が激しく下落しているからだ。
IT化が進むなかで、「報酬が劇的に下がる」職業にはいくつかの共通点がある。
『良い値決め 悪い値決め ―きちんと儲けるためのプライシング戦略』(田中靖浩/著、日本経済新聞出版社/刊)のなかでキーワードとして挙げられている「DOG」をヒントに、いまビジネスの現場で価格下落が起こる理由を読み解いていこう。
■世界を覆い尽くすDOGとは?
21世紀の負け犬DOG。これはDigital Online Globalの略で、デジタル、オンライン、グローバルで激しい値下げ競争が起こる環境をいう。DOG環境は、ビジネスの様々な分野で、仕事への報酬を「無料」に向けて向かわせている。
本書によれば、DOG環境で安値競争が起こる要因は以下のようにまとめられる。
D:デジタルデータの世界では、マネやパクり、コピーが横行する
O:オンラインの世界では、日本中・世界中のライバルと値引き競争が起きる
G:グローバルの世界では、仕事がコストの安い国に奪われる
これら3つの要因と無関係でいられるビジネスなどほとんどないだろう。この3つの要因をもつ職業は「無料」に向かって報酬が下落していく。しかし、その影響を最小限にとどめ、報酬を下げずに生き残る方法がある。
「DOGと戦わない」ことだ。本書によれば、DOGと正反対の発想であるCAT(Cozy Analog Touch)を目指せばいいという。
●DigitalからAnalogへ:
コンピュータには作れない、明るく不思議な魅力づくりを目指す
●OnlineからTouch(共感と触れあい)へ:
手作り感や思いを伝えて、共感してくれるファンづくりを目指す
●GlobalからCozy(居心地の良さ)へ:
小さくても、こじんまりした居心地の良い空間づくりを目指す
これらのポイントを押さえることができれば、「値下げ競争」の波に飲み込まれずにすむというのが本書の主張だ。値下げ競争とおさらばし、「満足高価格」を目指すには、従来のコスト・プライシングから顧客中心プライシングへの発想の転換が欠かせない。その方法を、マーケティングやビジネス心理学を駆使して伝授する本書、安い値決めから抜け出したい人にとって、有益な一冊になるだろう。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。