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永井孝尚「企業の現場で使えるビジネス戦略講座」

富士フイルム、卓越した経営 古びた「当たり前」を愚直に実行、主力事業消滅の危機を克服

文=永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表

 しかし、真実は言い尽くされた言葉の中にあることも多いのだ。この言い尽くされたことを実行しようとしない企業や人も多い。そして成功する人や企業は、言い尽くされたことを愚直に実行しているのだ。

 実はコダックは、1988年に巨額を投じて製薬会社を買収するなど、むしろ富士フイルムよりも先手を打って様々な多角化事業を積極的に進めてきた。しかし当時は本業の写真フィルム事業が好調だったこともあり、富士フイルムと比較して多角化意欲が薄かった面は否定できない。事実、1988年に買収した製薬会社も1994年に売却している。タイミングの違いはあるものの、両社の危機感の差からわれわれが学べるところは大きい。

 コダックが破綻し、富士フイルムが生き延びたのも、自社の強みを見極め、その強みを必要とする顧客と課題を見極め、リアルな顧客で検証し続けるという当たり前のことを、危機感を持って愚直に実行したからだ。

 ビジネスに「魔法の絨毯」は存在しない。常に危機感を持ち続け、当たり前のことを当たり前に行うことこそ、王道なのである。
(文=永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表)

永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表

永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表

 マーケティング戦略アドバイザー。1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャーとして事業戦略策定と実施を担当、さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。2013年に日本IBMを退社して独立。マーケティング思考を日本に根付かせることを目的に、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。専門用語を使わずにわかりやすい言葉でマーケティングの本質を伝えることをモットーとし、幅広い企業や団体へ年間数十件の講演やワークショップ研修を実施。さらに書籍・雑誌の執筆、メディア出演などで、より多くの人たちにマーケティングの面白さを伝え続けている。主な著書に、シリーズ累計60万部を突破した『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ(全3巻、コミック版全3巻、図解版、文庫版)、『そうだ、星を売ろう』、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』、『残業3時間を朝30分で片づける仕事術』(以上KADOKAWA)、『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)がある。最新著は『これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング』(SB新書)

・問い合わせ先:永井孝尚オフィシャルサイト

Twitter:@takahisanagai

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