■新たな暗号貨幣「クリプトキャッシュ」の正体とは
仮想通貨もクレジットカードもセキュリティ面に難を抱えている。では、完全に安全な暗号技術とは一体どういうものなのか。そこに挑んだのが本書の著者である中村氏である。
中村氏の提唱する「暗号貨幣(以下、クリプトキャッシュ)」は、「仮想通貨」登場よりはるか以前から多くの研究者によって研究・開発が行われてきたもので、その発端は1983年のデヴィッド・チャウム博士の論文までさかのぼるという。著者自身は1995年からこの研究の流れに加わった。
当時マッキンゼー・アンド・カンパニーに所属していた中村氏は、大手企業の依頼からデジタルマネーの普及の可能性を確信したが、同時にインターネット通信のセキュリティ面の問題を解決することが必要と判断する。そして、家業の建設会社を継承、自身の研究所を設立し、1996年後半にはMITに客員研究員として戻り、日本とアメリカを行き来しながら研究を進めた。
中村氏の開発した「クリプトキャッシュ」とは、「完全暗号」を使ったデジタルマネーで、離れた場所にいる二人が暗号鍵をネット上で送らないのにも関わらず、各々の暗号を更新していく点がポイント。
その本体は英数文字からなる記号列で、誰が、いつ、いくらの金額で発行したか等の情報を暗号化したものだ。その記号列を取引相手に渡せば、現金と同じようにその場で決済が完了するという。
今、日本は急速にキャッシュレス化が進んでいるが、一方で今後もセキュリティ面で大きな問題が起こるだろう。私たちの「お金」の安全はどのように達成されるのか。そこで使われる新たな技術が社会にどう影響を与えるのか。それを考える上で大きな示唆を与えてくれる一冊といえる。
(新刊JP編集部)
*1…クレジットカード不正利用被害の集計結果について(一般社団法人日本クレジット協会/平成30年12月28日発表)
https://www.j-credit.or.jp/download/news20181228b.pdf
*2…平成29年中におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(警察庁/平成30年3月22日発表)
2-(2) インターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生状況等より
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/H29_cyber_jousei.pdf
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。