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「家を建てると転勤命令が出る」法則にみる、企業経営と人事の「力の源泉」

文=長田貴仁/岡山商科大学教授(経営学部長)、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー
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「しようがない」が企業をおかしくさせる恐れも

 「しようがない」と部下が考えてくれれば、上司はマネジメントしやすい。「納得できないからやりません」という論理を封じ込め、企業文化であるかのように錯覚させ、組織全体をうまく牛耳ることができるからだ。それを巧みに使ったのが、人事であり、転勤である。人事異動で本人の希望を聞く社内エントリー制度を実施する企業も増えてきたが、従業員全員の希望を反映して人事異動先や転勤先を決められるわけがない。紙切れ一枚(辞令)で動かざるを得ないのがサラリーマンの宿命である。

 このようなシステムの中にあって、「上司には逆らえないよ」という気持ちを明に暗に表す部下は、いうことを聞いてくれる「いいやつ」と認められる。それが要因となり必ずしも出世するとは限らないが、「飛ばされる」リスクは減る。「結局のところ、人事は好き嫌いで決まっている」といわれる所以である。

 次のような都市伝説ならぬ企業伝説がある。「家を建てたら転勤命令が出た」という不条理な話だ。この事例は大企業で事欠かない。本人にすれば、仕事で大きな失敗をしたわけでもないのにどうして、と不思議に思う場合も多い。そのとき、上司や人事は見ている。「しようがない」と思ってくれるかどうかだ。つまり、「現代版踏み絵」といっても過言ではない。

 本人の希望を反映するため出身地や住み慣れた地で働いてもらう「地域限定社員制度」を声高に宣伝する企業が増えてきたが、「どんな所へでも飛んで行きます」という転勤族のほうが、賃金、昇進をはじめとする諸条件は良い。つまり、「しようがない」と考える人がリーダーになっていく人事制度は今も変わっていない。

 こうした現象は、中間管理職(ミドル)と部下の間では散見され、会社員であれば誰しも多かれ少なかれ経験していることだろう。ところが、この関係性を学習した人がトップになると、従業員全員に「しようがない」と考えるよう求めてくる。また、かつての部下がミドルになると、「私は辛抱したのだから君たちも」と自分の部下にも「しようがない」という価値観を押しつけかねない。

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