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アートディレクター佐藤可士和が語る「一流になるための“条件”」

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 ほかには、携帯電話端末のプレゼンがあったとします。端末のデザインを、CGで見せるのと、紙あるいはFRPでつくったモックアップで見せるのとでは、伝わり方が全然違います。例えばNTTドコモへプレゼンした際は、あえて紙で、ペーパークラフトのようにしてモックアップをつくりました。それは、強烈にフラットで、しかも一色で、ソリッドなものというコンセプトを理解してもらいたかったからです。FRPを使って材質感を表現するという考え方もありましたが、あえてケント紙を使ってシャープさを出すことで、コンセプトを理解してもらおうと考えました。

ーー佐藤さんの作品の中で、2010年、SMAPのアルバム『S map〜SMAP014』のキャンペーンで、渋谷の街全体をジャックしたのも話題になりましたね。

佐藤 以前はテレビのスポットCMを中心にキャンペーンが組まれていましたが、目に触れる機会が少ないという印象でした。そこで、同じ予算なら、テレビありきで考えるのではなく、もっと違うメディアの使い方を考えてみようと思ったのです。例えば、もしテレビCMに充てていた費用でポケットティッシュを作って配ったらどうなるのか? 日本中で配っても余るくらいのポケットティッシュを作れるわけで、それはすごいことですよね。実際には行いませんでしたが、例えばそういう発想を色々としてみました。

 SMAPにはいつも「次は何をやってくれるのか?」という世間からの期待感があります。広告も、その期待に応えるようなものにしたかった。そこで、思い切ってテレビCMをやめ、その予算で原宿、渋谷、青山のビルボードをほとんど全部買って、SMAPのビジュアルでジャックしたわけです。

 結果的にテレビのニュースやワイドショー、スポーツ新聞が大きく取り上げてくれて、単にCMを打つのとは比較にならないほどの効果があったと思います。加えて、SMAPらしいやり方を提示できたのではないかと思っています。

●一流の人たちの共通点

ーー佐藤さんは楽天やユニクロ(ファーストリテイリング)など大きな企業のブランド戦略にも携わっておられますが、一流といわれる経営者の方々が持つ共通点のようなものを感じることはありますか?

佐藤 不遜な言い方をお許しいただければ、皆さん、すごく頭の回転が速いし、先見性があるということですね。将棋の手筋を読むのと同じですよ。そして、ものすごく軸がしっかりしていて、ブレないということも共通点ですね。常に考え続けているから、そういうことができるのでしょうね。現在のような先行きが不透明な時代に、これから起こるであろう出来事を予測することは非常に難しいし、不可能に近い。でも経営者は、そういう時代にあっても、自社の事業を推進していかなければいけないわけです。

 ですので、先見性が求められます。ユニクロの柳井正社長、楽天の三木谷浩史社長、セブン&アイホールディングスの鈴木敏文会長といった方々は、みなさん、雲の上に頭がぽこっと出ていて、他の人が雲の下で右往左往している時に、「ゴール、行くべき先はそこに見えている」と仰っているかのようです(笑)。繰り返しになりますが、ほかの人が休んでいる時も、常に頭を回転させて、事業や社会のことについて考え続けているからではないでしょうか。

ーー本書の中で佐藤さんは、「プライベートと仕事を分けない」と書かれていますが、これがイコール「考え続ける」ということでしょうか?

佐藤 そうですね。全然疲れません。考えることは、とても楽しいです。楽しいから考え続けているとも言えますが。僕はいつでも、いろいろなことを考えていて、考えることが仕事だと思っています。ずっと高速で回転し続けているほうが、いいアイデアが浮かびますね。一度回転を止めてしまうと、戻るまでに時間がかかって、よくないんです(笑)。
 
 もちろん、頭の中で考え続けていても、肉体的には休みますよ。そして、意識的に運動するようにしています。

●クリエイティビティより几帳面さが重要

ーー佐藤さんが経営されるサムライでは、インターンシップ生の面接をする時に、クリエイティビティがあるかどうかより、カバンから書類の出し方が雑じゃないかチェックしたりと、「几帳面かどうか?」という点を重視するというのは、なぜでしょうか?

佐藤 あくまで僕の事務所の価値観ですので、一概にこれが正しいということは言えませんが……。アートディレクターという仕事は、「0.1ミリ右にずれている」とか、「0.1ポイント細くしたほうがいい」など、そういう普通、肉眼では見えないような、非常にデリケートな作業の積み重ねの上に成り立っています。ですので、もちろんスキルも重要ですが、それ以上に「感性の解像度」を持っているかということのほうが重要なのです。細かいことにすごく気がつくような人でなければ、僕の事務所では難しいと思います。

 クリエイティビティやデザイン力というのは、勉強と一緒で、練習すればスキルアップできますが、感覚や感受性というのは、その人が生まれ、育ってきた環境である程度決まってしまうと思っています。

BusinessJournal編集部

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