「同一労働同一賃金」という言葉の意味を知っているだろうか。
日本政府が働き方改革の目玉として進めようとしているもので、主要先進国では当然の考え方として認識されている。
「賃金」というところから、給料と深い関係があることは理解できるだろう。では、どいうものなのか。
『同一労働同一賃金で、給料の上がる人・下がる人』(山口俊一著、中央経済社刊)では、同一労働同一賃金によって企業の人事・賃金システムはどのように変わるのか、正社員、非正規社員など、雇用形態による待遇にどのような変化が起きるかについて考察している。
同一労働同一賃金とは、端的に言えば「同じ仕事内容であれば、同じ賃金にしなさい」という考え方。
ただ、もちろん営業マンは○円、技術職は○円というように、仕事ごとに一律給与にするという意味ではない。同じ技術職でも、担当職務の難易度や能力、成果によって賃金額が異なることは当然だ。
同じ仕事で同じ能力・実績であるにもかかわらず、正規・非正規といった雇用形態や男女、国籍などの要素で賃金差をつけてはいけない、ということだ。
政府が同一賃金同一労働で解決しようとしているのは、正社員と非正社員の賃金格差是正だという。労働者全体に占める非正規社員の人数割合は4割にまで達しており、しかもそれは従来のような主婦パート、学生アルバイトだけでなく、その収入によって生計を立てねばならない契約社員、派遣社員、フリーターといった層も増えている。これは急務の課題といえるのだ。
欧米の企業では、基本的に賃金は職務・職種によって決定するのが通常。つまり、「仕事」に対して決まる職務給という給与体系だ。ところがこれまでの日本では年功給、職能給といった「人」に対して給与が決まってきた。
職務給で重要点として、本書では、職務を適切に評価するということ、職種や職務を区分し、それぞれの責任の重さや難易度、影響度の大きさといったこと判定し、値決めすることがあげられている。
欧米では転職によるキャリアアップも活発なため、企業は同業種や同地域における他社の給与水準を日本以上に気にかける。他社より劣っていれば、優秀な人材を引き付けられないと考えるからである。
では、なぜ日本企業では「職種別賃金」が浸透しないのだろうか。それは、職種ごとの市場が明確でないため、賃金水準の設定が困難であるからであるという。
また、日本企業の特徴の一つである「職場ローテーションによる人材育成」、つまり、「総合職」という新卒一括採用の採用方法も同一労働同一賃金の広がりを妨げる。職種ごとに給与水準や体系が違えば、人事異動しづらくなるからだ。
しかし、日本でも「同一労働同一賃金」の風は確かに吹き始めている。給料は上がるのか、下がるのか。いったいどんな制度なのか、知っておくべきだろう。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。