「リーマン・ショック、東芝の不祥事、さらにメガバンクが打ち出した大規模な人員削減など、今やエリート会社員にとってもリストラや窓際族は他人事ではありません。終身雇用や年功序列といった日本の企業モデルは、とっくに崩壊しています。その不安感から、挑戦することに恐怖を覚え、ネガティブな感情ばかりが先立つようになったのでしょう」(同)
また、ジジイになる人たちは組織のなかで岐路に立つ世代でもある。
「大きな組織では、同期が出世コースを進んでいたり、転職や起業で成功している同世代がいたりと、30代後半あたりから自分の立ち位置がはっきり見えてきます。年下の上司が当たり前になり、若手に追い抜かれる怖さもある。そのため、『自分はこのままでいいのか?』という焦りや不安が生まれ、自分のなかで確かなものである学歴や役職に固執するようになるのです」(同)
ジジイ化しない、魅力的な男性の共通点
もっとも、この「ジジイ化」は、その迷惑を被っている若手にとっても他人事ではない。
競争が激しく先が見えない今の社会では、非正規雇用や失業といった事態に誰でも直面する可能性がある。抱えている不安感に年齢やキャリアは関係なく、今は「職場のジジイ」に対する愚痴をこぼす若手社員も、いつジジイ化しても不思議ではないのだ。
河合氏は「ジジイにならないためには、『首尾一貫感覚』を身につけることが重要です」と指摘する。これは、簡単にいえば「人生のつじつまを合わせる力」のことだという。
「私はフィールドワークのなかでさまざまな会社員や経営者の方の話を聞いてきましたが、ジジイ化しない人には、スポンジのような吸収力を持ち、どんな状況に置かれてもポジティブでたくましいという共通点があります。また、自分を俯瞰できるので変化する現実への適応力も持っている。そういう人は、歳を重ねて上司世代になっても、たとえどんな状況になっても、イキイキと日々を送って成長していくことができます」(同)
キャリアを重ねて「そこそこの実績」を残し、それでも謙虚な姿勢を貫くというのは意外と難しい。しかし、どんな状況で誰が相手であっても、「何か吸収しよう」という意欲があれば、「いつまでも魅力的な男性でいられる」と河合氏は言う。
念のために言っておくと、「自分はジジイじゃないから大丈夫」と考えるのは禁物だ。河合氏によると、「現実にジジイ化している人ほど、『絶対に自分はジジイじゃない!』と強く思っているもの」だそうだ。
自分も、迷惑なジジイかもしれない。そういう自覚や謙虚さを忘れ、周囲の変化に対して否定的なことを口にし始めたら、そのときは要注意だろう。
(文=佐野真澄/清談社)
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