見た目はまるで卒業アルバム。ズラリと並ぶ、いかにもデキそうな学生の顔、顔、顔。その下には実名と大学名、学部名が載る。そして、学生をクリックすると、今度は学生のインタビュー記事が現れ、彼らのこれまでのやってきたことや、信条などがわかる仕組みだ。
会費を支払った会員企業は、興味を持った就活生に面接を申し込む、説明会に呼ぶなど、自由にアクセスができる。こんな、“逆求人型”のネットサービスが話題になっている。
同サービスを運営するニューインデックス代表取締役社長・津田武(たける)氏は、ガクセンを始めた狙いについてこう語る。
「新卒採用している企業の人事担当者は、就職ナビサイトの扱いに疲れ切っています。大企業は大企業で、1万人以上来る応募をふるいにかけ、面接を仕切るだけでも大変です。また、中小企業は結構な料金を支払っても知名度で大手に負けて、あまり応募が来ない、あるいはやっと優秀な学生を確保しても、最後の最後でほかに取られてしまうなど、悩みは尽きないのです」
●学生専門ヘッドハンターのような新サービス
ガクセンはこうした悩み解決のため、「人事担当者の代わりに人海戦術で、どんな会社も欲しがる優秀な学生を探し抜きます。積極的に活動している学生をご紹介することで、そういった学生を欲しいと考える企業では、人事担当者が学生を選別する手間とコストを削減できます」(津田氏)という。
いわば、“学生専門のヘッドハンター”のようなイメージだ。
確かに、登場するのは学生団体のリーダー、学生新聞の編集長、NPOを立ち上げた学生、学生起業家など、「上位1%」と名乗るにふさわしい学生ばかり。
同社はこうした学生を、すでに掲載された学生からの紹介、SNS等による検索、マスコミ掲載記事などにより情報を得てスカウトして、プロのインタビュアーが取材して記事を載せる。
「自分も載せてほしい」という自薦も受け付けるが、そのためには、一項目につき200文字はある質問に10個は答えるエントリーシートが必要となる。それを同社スタッフが見て、目ぼしい学生にインタビューするが、実際に会ってみて、ほかの掲載学生に見劣りするようだと掲載を断ることもあるのだとか。
しかし、同サイトに載るような上位1%の学生は、自ら積極的に就活し、内定を10個も20個も勝ち取ってくる、もともと優秀な人たちのはず。彼らにとって、ガクセンに掲載されるメリットはあるのか?
「優秀な学生の間では、ガクセンに載ることがブランドになりつつあります。また、優秀な学生の中には、業種にはさほどこだわらず経営幹部候補生として、事業改革やマネージメントをやりたいと思っている人も多いので、自分が思いもかけなかった企業からオファーをもらうことが新鮮な発見になっている」(同)
●多様化進む就活
現在、ガクセンに掲載された学生にアプローチできる会員企業は、東証一部上場企業から中小企業まで、規模や業種はさまざまで、サービスを開始して2年が経過し、実際にマッチングした例も出ているという。
「ある優秀な文系学生が、理系の間では有名でも文系の間では知名度がさほどではない優良なIT企業から面接を申し込まれ、来年4月の入社が決定するなど、実績が出始めています」(同)
学生が企業にエントリーするのではなく、企業がエントリーして学生にオファーを出す「逆求人型就活」は、今後の一つのムーブメントとなりそうだ。
「就活は多様化の時代に入っていると考えています。優秀層は、通常のエントリー型に加え、我が社のような逆求人型、インターンシップを併用する等、あらゆる手段を用いて就職の選択肢を増やします。その中から、自分にふさわしい仕事を選ぶ時代になりつつあります」(同)
できる学生と平凡な学生の勝負は、就活解禁前についている――。そんな時代が到来しつつあるようだ。
(文=佐藤留美)