2002年、明太子日本一・ふくやから依頼を受け、若手経営者を対象とした広報に関する講演会を行ったことがある。そこに、農機具メーカー・筑水キャニコムの包行均会長も参加していた。
うれしいことにその講演がきっかけで、包行さんはネーミングの達人となったのだ。今やすべての製品に、何かにちなんだ親しみやすいネーミングを考えて、顧客に喜ばれている。「ネーミング」からメディア露出に成功した、珍しい例だ。
そこで、包行さんにその秘訣を訊いた。
――もともと、話題を呼ぶような面白いネーミングを得意とされていましたが、そのようなことを始められたいきさつをお聞かせください。
包行会長(以下、包行) 私は73年に入社して以来、ずっと営業をやっていたのですが、不況で広告予算や交際費などが削られるなかで、自社製品をメディアに取り上げてもらおうと思い、福岡経済記者クラブやその他業界紙などにリリースを配布していましたが、なかなかうまくいきませんでした。そこで、どうしたらマスコミ受けするかを真剣に考えたところ、独創的なあっと驚くことを考えなきゃダメと思いました。そこで、「簡単にできることは、ネーミングだ」とひらめいたのです。
――いい着眼ですが、どんな名前をつけたのですか?
包行 例えば、農業用三輪運搬車に「こまわりくん」、林業用運搬車には「やまびこ」と名前をつけたのです。ところが最初のうち、社内ではこれらの名前で呼ばれなかったのですが、ある時、お客さんから電話で「やまびこ2台」と注文が入った。これをきっかけに、社内でも面白がって呼びだした結果、話題にもなり、みんなの一体感も出てきました。また、小型クローラ運搬車の名前を「ピンクレディ」に決め、いろんなメディアに売り込んだところ、面白がって記事にしてくれたのです。農家のおばさんたちも、「これで仕事すると、若返った気持ちになる」と喜んでいますよ。「ピンクレディ」は業界においても有名で、今やこの機種の代名詞となっているほどです。
テレビ出演で売り上げ増
――独創的なネーミングを考えることは、今や社内の風土のようになっていますね。それによって社員が独創的な考えをし、アイデアを出し、自由に意見を出し合うようになる効果が大きいと思います。社員は会長とのやりとりの過程で、アイデアが固まってくるようですね。ほかにも面白い名前の製品はありますか?
包行 有名な俳優さんの名前にちなんで、草刈機に「草刈機MASAO」と名前をつけたところ、たちどころに話題になり、とても人気が出ました。おかげさまで同機は、01年には「グッドデザイン賞」も受賞しました。また、テレビにも出ましたよ。『WBS』(テレビ東京)や『アッコにおまかせ!』(TBS)に出た時には、いろんなところからひっきりなしに問い合わせがあり、ビジネスにも直結しました。