ケータイ、キャバクラ、株含み益…失敗する経営者の“条件”
――ライブドア時代のご経験も生きているのですか?
塩野 ライブドアで得たことはいろいろとありますが、一番良かったのは、いま顧客企業の経営者から相談を受けた時、自分の経験に基づいて、「社長、それやったらアウトですよ」と言えるような経験をしたことでしょうね。あとは、色んな人を見て、もしも金持ちになったらどうすればよいか、何をしたらいけないかを知ったことです。
本業とは違う方向に投資をする
――具体的には、どうすればよいのでしょうか?
塩野 起業がうまくいって株式上場して、株価が急上昇した株を担保にお金を借りて豪遊した挙げ句、株価が暴落して借金が払えなくなり、自己破産するような起業家を、私は数多く見てきました。投資の原則に「本業とは違う方向に投資をする」というものがありますが、例えば私は、株式や投資、M&Aが本業ですから、インサイダーの問題もあって個人的には株式投資は全くやりません。だからライブドア時代にもらったストックオプションは、上場廃止ですべて紙くずになりましたが、仕方が無かったと思っています。
――社内起業については、どのようにお考えですか?
塩野 本書にも書きましたが、特にサラリーマンの方に独立をお薦めするつもりはありません。ですが、独立するとか辞める勇気があるのであれば、今勤務する企業内のリソースを活用すればいい。新規販売拠点の立ち上げや新製品の開発、サービス開発も、立派な社内起業なんです。起業=ビジネスをつくり出すという能力においては、社外だろうが社内だろうが意味があるんです。実は、そうした能力が、現在の人材市場の中で一番高く売れる能力なんです。
「きゃりーぱみゅぱみゅ」を検索できるかどうか
――そうした能力を持った人に共通な点は、なんでしょうか?
塩野 好奇心を持っているという点です。今、世の中で好奇心の持つ価値がどんどんでかくなっている。あるキーワードが出てきてわからなかったら、「検索するか否か?」が価値を持ってしまう。例えば、私と同年代のおっさんが会話していて「きゃりーぱみゅぱみゅ」の話題が出た時に、知らないくせにさらっと流してしまうのではなく、「何それ?」って検索できるかどうか。国会図書館に行く必要もなく、ネットで検索するだけで、大抵のことはわかるようになっているし、知り得る情報量は膨大なものになります。誰もが知識や情報を簡単に得られるようになっているから、「検索をする好奇心があるかどうか?」が非常に重要なんです。その背景や他とのつながりなどを通じて、知識が広がっていった時には、そのこと自体がものすごいバリューになる。