本書の著者は、大手コンサルティングファーム・マッキンゼーで史上最年少マネージャーとなり、まさしくタイトルの通り、その“地位”と“高給”を捨てた田中裕輔氏。
独立後田中氏は、「コンシェルジュ」「翌日無料配送」などの斬新なサービスで話題の、「靴の通販サイト ロコンド(http://www.locondo.jp/)」を運営するジェイド創業に参画、現在代表取締役を務めている。
そんな田中氏に、
「地位の高給も得られるマッキンゼーを、なぜ辞めたのか?」
「なぜ、アマゾンや楽天という競合がひしめく通販ビジネスに取り組むのか?」
などについて、自身の豊富な経験を交えながら、語っていただいた。
――本書は、今ビジネスパーソンの間で話題になっていますが、その要因とは?
田中 今までマッキンゼーで働いていた人が書いた本は、難しいというイメージがあったと思います。それに対し、本書では、読みやすい表現でリアルな体験談を書きました。それが売れている要因かなと思います。また、本書の中で繰り返している「インパクト志向」というメッセージに共感してもらっているのではないでしょうか。
――本書の中心的なメッセージでもある「インパクト志向」とは、どういうことでしょうか?
田中 インパクトとは日本語にすると「衝撃」という意味で、世の中に対しなんらかの衝撃を与えるということです。仕事で売り上げを上げたり、利益を出すということではなく、衝撃を与えて何かを変えていくということです。自分の働き方にしても、何かへ衝撃を与えるために働くのと、評価されたい、給与を上げたい、安定したいということのために働くのでは働き方が変わってきます。また、私は「日本にインパクトを与えたい」という志をマッキンゼーで教えてもらい、強く影響を受けました。そういった考え方を「インパクト志向」という言葉で表現しています。
ホリエモンや村上ファンドのエネルギッシュさ
――なぜ、いま「インパクト志向」なのでしょうか?
田中 私は現在31歳ですが、私の10歳くらい上の40歳前後の人たちは、ホリエモンや村上ファンドの村上世彰さんを筆頭に、いろいろな結末はありましたが、少なくとも日本を変えてやろうとエネルギッシュでチャレンジする人が多かった。それに対して、私と同世代の人間はおとなしいなと感じていました。自分が仕事を通して何かを変えてやろうというのではなく、基本的に働く目的が安定や給与のためになってしまっている。
もちろん、働くことのひとつの意味は、お金を稼ぐことなので、そういう目的なのはわかります。しかし、30歳前後というエネルギッシュでチャレンジングであるべき世代が、もっと自ら日本や世界を変えてやろうとなってほしい。そういう人間が増えればおもしろいし、私と同じ志をもつ人間が増えてほしいとも思います。そうでなければ、これからの厳しい社会状況に勝っていけないのではないでしょうか。