際限のない価格&質劣化競争が行き着く果て スタバ誕生秘話と牛丼業界の変遷より考察
●価値勝負へ転換する牛丼業界
現代の日本で価格競争といえば、牛丼業界だろう。ここでも、実は同じことが起こりつつある。
日本の牛丼業界はこれまで一杯300円以下で価格競争を繰り返し、業界全体が疲弊してきた。「すき家」のようにいわゆる「ブラック批判」にさらされてしまい、やむを得ず営業時間短縮を余儀なくするケースも出ている。そんな中、「松屋」は昨年7月に「プレミアム牛めし」を380円で、「吉野家」は昨年10月29日に「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」を630円でそれぞれ販売し始めている。円安の影響による材料高騰もあり、牛丼業界も価格勝負から価値勝負へ転換することを求められているのだ。
このように、企業が生き残るために必要なことは、顧客に対してより高い価値を提供し続けること。そのためには、継続的に顧客にとっての新たな価値を生み出し続ける変革が必要だ。
米国のコーヒー業界も、レギュラーコーヒーの真空パック技術が確立され、市場が成長していた時期は、価値を訴求していた。しかし多くの業者が参入し、市場の成長が頭打ちになり、競争が激しくなると、シェア争いを目的とした価格勝負に変わってしまったのだ。そこへ、よりおいしいコーヒーを重視したスペシャリティコーヒーが生まれ、再び価値勝負に転換していった。そして今、コーヒーのサードウェイブが始まりつつあるのだ。
このように市場では、価値競争と価格競争の間を揺れながら、あたかもらせん階段を上っていくかのように進化していくのだ。
●環境変化を生き残る条件
ここで注意すべきことがある。価格競争に陥ったすべての企業が、価値競争に生き残れるわけではないことだ。価値を生み出した者だけが生き残る。
それは生物の進化を見ても明らかだ。
白亜紀に地球を支配していた恐竜が6600万年前に突然絶滅したのは、ユカタン半島に落下した直径10kmの巨大隕石が引き起こした、10年間にも及ぶ気候変動が原因だと一説にはいわれている。急激な気候変動に、ほとんどの恐竜は巨大な身体を維持できず、対応できなかった。一方で対応できたほ乳類は、生き残ることができた。