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スポーツライター小宮良之の「フットボールビジネス・インサイドリポート」第3回

今晩スペイン戦 日本人好みの“走るサッカー”では勝てない!

文=小宮良之

「走るサッカー」という元日本代表監督イビチャ・オシムの標榜は、世の中に伝播したが、Jリーグの下位のチームでは走ることのみに囚われ、言葉が一人歩きしている。

 フットボール大国、スペインでは選手が闇雲に走り回ることを、「Gallo sin cabeza」(頭のない雄鳥)と表現する。頭部を切断したまま1年以上雄鳥が生き延び、走り回った、という科学実験がかつてあったらしい。そのおぞましい光景を、人々は選手がピッチを意志も意図もなく走ることの比喩として使っている。

 サッカーチームだけでなく会社などあらゆる集団において、自分の役目でもないのに動き回る人がいるとしばしば迷惑を被るものではないだろうか。逆に派手さはなくても、担当を守りながら周りを助けられる人がいると相互関係が良くなり集団は機能する。

 ロンドン五輪サッカー男子代表には、人材がいないわけではない。

 FWの杉本健勇は前線であまり動かず、消えている時間もあるが、動くべきときに動いているから相手にダメージを与えられる。わずかに体の方向を変えるだけでパスコースを生み出し、相手のポジションを乱し、隙を作っている。なにより決断が迅速で、迷いがないため、外側からみたよりもプレースピードは数倍速い。“走るよりも速く時間を操っている”のだ。

 頭のある雄鳥として戦えるか否か。

 それは指揮官の采配に大きく掛かってくる。7月26日、第一戦は圧倒的戦力差のあるスペインが相手だ。日本は総力を結集するしかないが、“玉砕”を叫んで突っ込むだけでは勝機はない。
(文=小宮良之)

小宮良之

小宮良之

1972年、横浜市生まれ。大学卒業後、スペインのバルセロナに渡り、語学力を駆使してスポーツライターとして活動。EURO、冬季五輪、W杯などを取材後、2006年から日本に拠点を移し、人物ルポ中心の執筆活動を展開する。『アンチ・ドロップアウト』『フットボール・ラブ』(共に集英社)、『名将への挑戦状』(東邦出版)、『ロスタイムに奇跡を』『導かれし者』(共に角川文庫)、『ザックJAPANはスペインを倒せるか?』(白夜書房)など著書多数。最新刊は海外移籍した日本人の戦いを検証した『サッカー「海外組」の値打ち』(中公新書ラクレ)。

Twitter:@estadi14

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