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山本一郎

山本一郎「摩訶不思議な石原都知事電撃辞任と都政13年の功罪」

文=山本一郎
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post_948.jpg都庁も揺れる。(「Thinkstock」より)
――山本一郎氏が、国内外の経済・企業ネタから、テレビ・芸能ネタまで、幅広くチョイス。今回は、先日電撃退任した石原慎太郎都知事のこれまでと、猪瀬直樹氏の挙動を始め、そのほか有象無象の出馬が囁かれる都知事選に関する記事をピックアップしていただきました!

 もう、何がなんだか分かりません。投開票は12月17日とのことでありまして、今月いっぱい都知事選月間です。

 現段階では猪瀬直樹副都知事は「まあ待て。まだ出馬するとは言ってない」という状態であるということを念頭において、本稿をお読みください。

 一応、個人的な見立てとしては猪瀬さんが選挙に出ず、都知事選に出た候補者の副知事に納まることを条件に支援に回る可能性もあるよねえ、という筋だけは冒頭で述べておきます。

都知事選、出馬取り沙汰される猪瀬・東国原氏 — 読売新聞(10月30日)

 いまのところ、石原慎太郎氏に後継指名された猪瀬直樹氏と、前回都知事選で次点であり立候補を事実上表明した東国原英夫氏が有力視されている、という状況であります。これが良いか悪いかは、都民各自の政治感覚でご判断いただきたいということで。

 以下、候補者や状況については、この“後だしジャンケン”を狙うと見られる猪瀬氏と、他候補者の強弱という目線でしか判断できなくなりそうなのが怖いです。

都知事選「猪瀬VS東」に小池、蓮舫の女性刺客参戦!? — スポニチ アネックス(10月28日)

 で、当然のように「あいつ、出るんじゃねえの?」という予測合戦が華やかになるわけでございますけれども、知名度が高く清潔感がある(と有力者に思われている)女性候補の名前が浮いて出て、おもしろがるのも祭事の特徴であります。村田蓮舫女史に関しては、前回の都知事選も出るんじゃないかという観測が流れつつも、致命的なスキャンダルを匂わされて推薦者が腰砕けとなり、出馬が本人の意向に関係なく見送られた経緯があるとされているので、今回もそんな爆弾が投げ込まれたりするのでありましょうか。

猪瀬氏断トツ一番人気! 自民の都知事選極秘調査で判明 苦慮する民主、自民 — ZAKZAK(11月1日)

 この手の報道には地味に強いZAKZAK、さっそく現段階での自民党本部の調査結果を握り締めて、渾身の記事を書いており興味深いところであります。いま確実視される立候補者を支持する割合が高く出る傾向はあるので、鵜呑みにするのは危険ではありますが、某政治系の高額調査会社の出した速報結果とそれほど変わらないという点で「確かに現段階では猪瀬さんが出れば勝てる状態と判断してよいかもしれない」と思われます。

 なお、後出しジャンケンが有利なのは、知名度だけでなく支持基盤が広く出馬期待が高い人だけですので、ここで自民が小池百合子女史を後だしジャンケンで出しても、単なる広報不足や準備不足に直結するのみなのは同党本部も承知するところだと思いますので、万が一可能性があるよとなると猪瀬さんを推すか、石原伸晃氏を電撃出馬させるかの二択じゃないのと思ってしまいますね。

「石原新党」で複雑化する衆院選後の政界地図 — フォーサイト(10月31日)

 フォーサイトでは、石原新党設立の経緯と引っ掛けて広範囲に「石原帝国」の通り筋を論じており、こちらもまた興味深いところであります。事実関係の是非はともかく、石原家が日本政治の中枢でその挙動が注目される事態というのは、何気に日本社会の政治成熟度合いの微妙さとあわせて、政治家の世襲に対する是非や、ひいては一票の格差といったところにまで影響する発展途上ぶりを感じさせるところであります。

尖閣不発で終焉 石原都政13年の功罪 ― 日経新聞(11月1日)

 日経新聞が、石原都政の最後っ屁とも言える尖閣諸島の土地購入問題に引っ掛けて、微妙な総括記事を書いております。もちろん、論じるべき部分は築地や五輪のほかにも、前回、突然の四選出馬前後に囁かれた石原逮捕説もいまなお根強く、そういった部分の闇についてもしっかり踏み込んで論じてくれる媒体や論説委員が出てこないものだろうか? と思うところです。

「猪瀬・橋下」連合は東電・関電の経営を変えられるのか — 日経ビジネスオンライン(6月28日)

 猪瀬都政が仮に実現した場合に周辺への影響がどうなるのかも含めて、旧大阪維新との連携について触れた記事がこちら。上昇気流を狙って大きい話題に積極的に食いついていく橋下徹氏のアプローチとはまた違った意味で、猪瀬氏の取り組み方というのも問題対応においては、若干ダボハゼ的なところがあります。これで都議会に根回ししなくてもどうにかなったのは真に「都知事ではなく、副知事だったから」だと思われるので、本気で猪瀬さんが問題の矢面に立って批判に直接さらされながらも大都市東京の問題解決に取り組んで行けるのか、興味深い部分ではあります。

平成23年度「東京都年次財務報告書」の概要(PDF) — 東京都財務局(9月14日)

 最後に、カネの面から石原都政の最後について論じるにあたり、財務省から出た東京都財政の概要についてご覧いただければと思うのですが、現状で見て企業においてP/L(損益計算書)となる年度収支は、ほぼ均衡。公債費負担は10%内外と、ごく普通、極めて平凡、驚くほど横ばいで、何も成果もなければ何の落ち度もないという結論に至ろうかと。

 大阪維新の会が、当初は地域政党として大阪府の債務削減を強弁していたのに比べ、青島前都知事から引き継いだ壊滅的な財務からは立て直せたものの、高齢者増や地方税の恒常的な落ち込みから四年連続の税収減、さてこれからどうするか、というのが東京の現状であります。いまから思えば、尖閣諸島でカネを集めるよりも先に、地震対策のより一層の推進やインフラ再整備、ソフト面では高齢者対策に均衡通勤者に対する過密緩和策の充実といった、もう一歩頑張って欲しかった分野では、なかなか都政が及ばなかったのかなあというのが所見になるでしょうか。

山本一郎

山本一郎

 2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場に精通。2007年より、総予算100億円超のプロジェクトでの資金調達や法人向け増資対応を専門とするホワイトヒルズLLCを設立、外資系ファンドの対日投資アドバイザーなどを兼務。

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