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松江哲明の経済ドキュメンタリー・サブカル・ウォッチ!【第11夜】

ホームレス、借金地獄、失踪……年の瀬の新橋に突撃!

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ザ・ノンフィクション
毎週日曜日 14:00から放送。
(「足成」より)

ーー『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』(共にテレビ東京)『情熱大陸』(TBS)などの経済ドキュメンタリー番組を日夜ウォッチし続けている映画監督・松江哲明氏が、ドキュメンタリー作家の視点で裏読みレビュー!

今回の番組:12月9日放送『ザ・ノンフィクション』(テーマ:ささやかな幸福論 ~新橋酔いどれ天使~)

 前代未聞のオープニングだった。お馴染みの「生きて~る、生きている~」のテーマ曲に重なるのは、泥酔したおっさんたちの顔。「景気よかったら新橋いない。銀座行く。わっかるでしょー」と笑うスーツ姿の男性もいれば、黄色い厚手のジャンバーを着込み、地べたに座る「ホームレスほど仲がいいんですよ」と微笑む路上生活者の姿も。

 黒バックに明朝体の文字で「それぞれの……人生に酔う」と格調高い雰囲気を出すが、これでは台無しだ。だからこそ最高!

 放送時間中に、Twitterを見たら『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン)のマンガ家・清野とおるさんもチェックしてるぞ。さすが町の偉人変人を見つけるアンテナを持ってる人だ、この番組の“いい匂い”を感じ取ったんだろう。しかし今回の「ザ・ノンフィクション」、『ささやかな幸福論~新橋 酔いどれ天使~』は期待以上の怪作だった。

 まず番組のコンセプトが凄かった。なんと新橋の飲み会の席でこれから「自宅に行っていいですか」と交渉し、一晩泊めてもらって、翌日の仕事も撮影させてもらう、というもの。なんだか企画モノAVみたいなノリで(僕はこれってカンパニー松尾監督の『私を女優にして下さい』みたいだな、と思った)、ディレクターは何人も話しかける。もちろん断る人も多いが、中には周囲の「やっちゃえー」も手伝って「来ちゃう? 本当に来ちゃう?」となってしまう。

 設計事務所の社長、末竹さんはリーマンショックの影響をモロに受け、借金は9000万! 会社の壁には「感情より勘定」なんて張り紙があり、ため息をつくアップの映像がインサートされた。もう、この一発でこの人が置かれている状況が伝わって来てしまうのは、前日の夜に新橋で見せた「わっかるでしょー」とのテンションの落差が凄いから。

 しかし末竹さんには頑張る理由があった。

 それは家族。酔っぱらって帰って来て、幼い子どもを布団に入れようとして嫌がられようとも、それが嬉しいし、数時間しか寝ていない翌朝でも「行ってらっしゃーい」と言われれば力になる。僕は、赤ら顔で「起きてる時に帰ると怒られるので、寝るまで帰りません」と言っていた 末竹さんの切なさを思い、笑った。

 続けて紹介されるのがホームレスの窪田さん。酒を勧められると、カメラ越しにディレクターの手が伸び、焼酎をあおるのが見える。いいなぁ、この距離感。自宅を撮影する、というコンセプトが二人目にして適用外となっているが、そんなことどうでもいい。社会のルールから外れた人を撮っているのだから。

 このおやっさんに向けて流しのOちゃんが「リンゴの唄」を歌う。この番組、了解してくれた人に向けてテーマソングが流れるのだ。ディレクターの優しい視点を感じる なぁ。窪田さんは新橋で日銭を稼ぎ、仲間と公園の隅で飲み始める。

『白鶴 まる 2L × 6本』


おかぁさんも桜色! なんつって。

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