NEW
他幹部の悪評流布、外国企業へ情報漏洩懸念も

トヨタも迷惑、トヨタへの天下りが夢だった「小物経産官僚」の巧みな権謀術数

【この記事のキーワード】

, , ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


※各業界の最新ニュースをお届けする新ニュースサイト「Business Topic」がオープンしましたので、ぜひご利用ください。

トヨタ自動車本社(「Wikipedia」より
/Chris 73)
 トヨタ自動車の子会社でシンクタンク・国際経済研究所(東京都千代田区)の役員人事に、霞が関の注目が集まっている。今年6月、霞が関でもほとんど名前の知られていない経済産業省出身のキャリア官僚が天下ったからだ。その背景を探ると、巧みな権謀術数が見えてくる。

 国際経済研究所に副理事長として天下ったのは、大辻義弘氏。1979年に東京大学法学部を卒業して通商産業(現経済産業)省に入省。ジェトロ・バンコク所長、貿易経済協力局通商金融・経済協力課長、中部経産局長などを歴任後、役人として最後のポストが内閣府沖縄振興局長だった。このポストは、経産省のキャリア官僚としては決して出世コースではなく、「退官後のキャリアに箔を付けるためのおまけのような役職」(関係者)といった程度のものだ。

 ここ20年間に経産省からトヨタに天下った経産官僚は3人。まずは山本幸助・元通産省産業政策局長。次官候補だったが、省内の派閥争いに敗れてトヨタに転じ、最後は副社長まで務めた。次に省内ナンバー2のポストである通産審議だった中川勝弘氏。氏はトヨタでは副会長まで務め、その後はトヨタの相談役をしながら国際経済研究所理事長を今年6月まで歴任した。3人目が、資源エネルギー庁長官を務め、現在、トヨタでは副社長の職にある小平信因氏だ。

 大辻氏は中川氏の後任として国際経済研究所に天下った格好になり、格やバランスを重んじる中央官庁のキャリアの人事から見れば、破格の待遇の天下り先を得たことになる。トヨタ関連は報酬が高く、ヒラの役員級でも年収は最低2000万円程度、秘書と部屋が用意され、場合によって車も付く。多くの官僚にとって垂涎の天下り先だ。ところが、「小物官僚」の大辻氏が、経産省でもトップクラスの大物官僚の天下り先であるトヨタ系企業の役員になったことに、霞が関から驚きの声が出ているのだ。

●天下り先に自らを売り込み?

 さらに驚くことに、経産省の関係者によると、「大辻氏は私を役員にしてください」と自らトヨタに売り込みに行ったという。キャリア官僚が自らを天下り先に売り込むのは珍しい。なぜならば、OB人事もほとんどが役所人事の一環として回っているゆえに、自分では決められない一面があるからだ。

 大辻氏は中部経産局長時代から「私の夢はトヨタに天下ること」と公言してはばからなかったようで、2011年に退官後は「政策研究大学院大学客員教授をしながらどこにも天下らず、日本のローソンと友好関係にあるタイの有力企業の顧問をしながら生活の糧を得ていた」(経産省OB)という。トヨタのポストが空くのを狙っていた模様だ。

 その間に大辻氏は涙ぐましいほどの努力をして、トヨタへの食い込みを図る。先輩である中川氏や小平氏への接近を図ったほか、真偽はともかく、前出の経産省関係者は「大辻さんが『豊田章男社長のアジア出張のお世話までしている』と話しているのを聞きました」と振り返る。

 トヨタの関連情報を多く仕入れ、「『トヨタのことならば、なんでも私に聞いてください』という感じで古巣の経産省にアピールしていた」(経産省OB)という。その結果、大辻氏の功績を認め、経産省も大辻氏のトヨタ系への天下りを容認することになった。

 ところが困ったのはトヨタ側だ。大辻氏程度のキャリア官僚を受け入れる前例をつくってしまえば、今後、大物官僚が来なくなる可能性があるし、バランスが取れない。トヨタが大物官僚の天下りを受け入れるのは、霞が関や政治とのパイプ強化のためだ。はっきり言って「小物」では役に立たない。そこで苦肉の策として、トヨタ本体ではなく、系列シンクタンクの役員としての受け入れが決まった。

 大辻氏にしてみれば、トヨタ本体の役員、特に自分が得意とするアジア関連の担当役員のポストを狙っていただけに、シンクタンクの役員では「夢」は半分しかかなえられていないことになる。

●重要情報漏洩の懸念も

 大辻氏は、トヨタ本体への役員就任をあきらめたわけではない。経産省の関係者はこう指摘する。

「最近、役所内でトヨタのアジア担当の役員が能力不足という話をよく聞きます。また、アジア担当役員が豊田社長の悪口を密かに言いふらしているという話もよく聞きますが、発信源は大辻さんのようです。現在のアジア担当者の役員を蹴落としてでも、自分がその後任に座りたいのでしょう」

 実際、トヨタのアジア担当役員が能力不足かといえばそうではなく、デマに近い。タイトヨタは業績もよく、インドネシアトヨタも業績が急成長している。タイトヨタの棚田京一社長も、インドネシアトヨタの福井弘之社長も、額に汗流して働く質実剛健派のトヨタマンで、トヨタ本社からの評価も高く、人望も厚いという。