「難しくてよくわからない」「とりあえず入っておけば安心」「CMでよくやっている会社が信頼できそう」――生命保険について、このような印象を持っている人は少なくないはずだ。
「病気」や「死」という非常にセンシティブな問題が絡むがゆえに、消費者は非合理的な選択をしてしまうことが多いともいえる。では、実際に私たちはどんな行動をとってしまっているのだろうか。それを明らかにしたのが『生命保険の嘘 「安心料」はまやかしだ』(後田亨、大江英樹/著、小学館/刊)だ。
新刊JPニュースでは著者のお二人、後田氏と大江氏をお招きしてインタビューを敢行。前編では生命保険のテレビCMや、保険セールスマンの営業で気をつけるべきワードを教えてもらったが、今回は生命保険業界のより深い部分をうかがった。衝撃の後編をお送りする。
(新刊JP編集部)
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(前編はこちら)
――後編では、生命保険業界のより深い部分についてお話をうかがっていきたいと思います。本書は『生命保険の嘘「安心料」はまやかしだ』というタイトルなのですが、この「安心料はまやかし」の意味について教えて下さい。これは、安心料はリスクやクライシスというストレスから逃れるための、いわゆるストレス解消料だということでしょうか。
後田 そうですね。だいたい保険について考えること自体がストレスでしょう。不安と向き合わないといけないわけですから。ただ、安心料として支払う上で、その額が妥当なのか、リーズナブルなのかは一切分からないままなのが問題なのです。
安心料どころか、ボッタクリかもしれないわけです。支払った保険料のうち、会社の運営費等に使われる部分の割合を開示しているのは現状一社だけで、ライフネット生命です。その割合は概ね20%台なので25%で計算すると、100万円払ったら75万円が加入者に還元されるということです。これだと競馬の払い戻し率と同じ比率です。だから、生命保険の価値を高めるには、この経費率をどこまで下げられるかがポイントになると思います。
経費率が低い例を挙げると埼玉県民共済は経費率が約5%です。それでも、まだ余裕があるといいます。加入者が出したお金は、全額が保険金支払いに回るのではなく、会社の経費等に消える部分がある。その割合が何%なのかを問わないといけません。中には50%程度で売っていると試算される商品もあるんですよ。そんなに諸経費を抜かれても『安心料』と言えるでしょうか? 私には『保険料は安心料だから』とまとめてしまうのは、ある種の思考停止のように思えます。
――「安心料」という言い方をしてしまうと、何も分からなくなってしまいますよね。大半が企業の利益になるのかも? と考えれば見方も変わってきます。
大江 本当の意味での『安心料』で言えば、掛け捨ての商品ですよね。めったに起こらないけれど、起こったら大変なことに対して入っておくという非常にシンプルな保険です。ところが、それ以外にも複雑な商品が出てきて、すべてひっくるめて『安心料』というのは明らかにおかしいですね。
後田 安心の水増しというかね。
大江 投資信託の世界にも、手数料がものすごく高い商品があって、よくボッタクリと言われるのですが、まだ投資信託は情報を開示していますからね。相手の選択に必要な材料はあります。
後田 生命保険業界を見てから、投資信託業界を勉強すると手数料の安さに驚きますよ。1%や2%のレベルで競争しているのですから。