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GPIF、年金積立金のリスク運用増めぐり常識を逸脱 政治圧力で機能停止した運用委員会

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「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 公式サイト」より
 約129兆円といわれる巨額の積立金を運用するGPIF年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針が注目されている。

 目下、国内株式に資産の約17%が配分されているといわれているが、国内株式への配分が1%増えるだけで1兆3000億円程度の株式の買いが発生する計算だ。より正確にいうと、GPIF以外にもGPIFの運用方針に影響を受ける資金が数十兆円存在するので、運用方針変更の影響額はもっと大きい。

 また、GPIFが外国資産(外国債券、外国株式など)への配分を増やした場合には、外貨の買いが発生するので、為替レートを円安方向に動かす影響力がある。

 GPIFの運用方針が注目されるのは、今後、消費税率引き上げの影響等で株価が低迷した場合、政府がGPIFの資金を「株価対策」「為替レート対策」に使うのではないかとの憶測が市場関係者の間にあるからだ。

 現役の閣僚の中にも「夏以降GPIFが動くのではないか」などと発言する向きがある。政治家としては、自分が影響力を行使してGPIFを動かし、株価に好影響を与えようとしている、とアピールしたいのだろう。しかし、こうした憶測が拡がって株価が上昇してからGPIFが実際に株式を買うことになると、GPIFはこうした発言がなかった場合よりも高値で株式を買うことになるのだから、この種の発言には実害を伴うリスクがある。閣僚としての立場をわきまえていない発言だ。

●機能が停止した運用委員会

 GPIFに限らず公的な資金の運用はこのような政治的な圧力で歪められるリスクがあるし、公務員は必ずしも資金運用の専門家ではない。こうした弱点を補うために、外部の有識者を集めた「運用委員会」が設置されて、公的資金の運用方針の検討や運用業務をチェックするかたちになるのが通例だ。GPIFの運用委員会では先頃、米澤康博早稲田大学教授が委員長に就任した。

 GPIFが運用する公的年金の運用方針は、6月3日に政府が発表した将来の長期的な経済見通しを前提として、運用委員会での検討等を経て、今年の秋以降に改訂版が発表されるのではないかと目されていた。6月3日付日本経済新聞記事によれば「10月頃の発表が有力だった」というくらいのスケジュール感だったが、同記事で米澤氏は新しい運用方針を「政府から要請があれば、8月にも発表する予定がある」と語っている。現在、新方針で株式・外貨建て資産などを買い増しするとの見方が強く、米澤氏の発言は、政府から要請があれば株式を買い増しする方針を8月に前倒し発表する可能性がある、と解釈するのが常識的だ。

 しかし、そもそも運用委員会は、専門家が運用について専門的かつ客観的に検討する場であり、米澤氏をはじめとする有識者はそのために集められている(という建前だ)。つまり、運用方針の見直し時期を含めて、有識者が専門的知見から進言し、決定する(現在の仕組みではGPIF理事長が決定する)のが本来の姿ではないか。
 
 米澤氏の発言から推測するに、GPIFの運用方針に関して明らかに政府の圧力が存在する。そして、有識者会議であるGPIFの運用委員会は、これに影響されずに専門的な知見から運用の判断を行うという期待に応えることができていない。