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スキルや専門知識は二の次!仕事がデキる人に共通の根源的要素

文=安達裕哉/経営・人事・ITコンサルタント
スキルや専門知識は二の次!仕事がデキる人に共通の根源的要素の画像1「Thinkstock」より

 仕事ができる人とできない人、本質的な違いはどこにあるのか。筆者はコンサルティング会社に在籍していた期間中、そのことを深く考えていた。

 なぜなら、顧客の経営者や担当者の力に頼らなければ、コンサルタントは本質的には成果を上げるために何もできないからだ。仕事のできる人をきちんと見抜き、仕事のできない人には邪魔をしないでいただく。そういったドライな線引きが必要だった。

 もちろん、仕事ができる/できないを決める要素はひとつだけではない。専門的な知識が必要となるシーンや、仕事のツールを使いこなす能力、あるいは英語などの語学力がどうしても必要となるシーンがあるのは間違いない。だから、将来に不安を抱えていたり、キャリアアップしたいと考えるビジネスパーソンは、資格を取得したり、英会話スクールに通ったりする。

 だが、多くの現場に通ううちに、スキルや語学力以前の話として、もっと根源的な違いが、できる人とそうでない人にあるのではないかと思うに至った。

 それは、「物事を率先してやる力」だ。筆者は「率先力」と呼んでいるが、この力の有無はキャリアに非常に大きな影響を与える。このことに気づいたのは、下に紹介するエピソードのようなシーンに、さまざまな会社で何度も遭遇したからだ。

最初に案を出すことの重要性

0629_sinkanjp.jpg『仕事ができるやつになる最短の道』(安達裕哉/日本実業出版社)

 筆者は、ある会社にコンサルタントとして雇われていた。「営業支援」という名目だったのだが、実質は経営者の相談役であり、若手の育成担当でもあった。その会社では、毎週営業会議が行われ、筆者もそこに同席することが多かった。その会議にまつわる思い出深い出来事がある。

 その日の営業会議のテーマは「集客」だった。新しいサービスを立ち上げたのだが、いまひとつ反応が悪く、「これからどうすべきか」の話し合いを部門全体で行っていた。会議のメンバーは部門の主要メンバー約15名、若手からベテラン、部門長までが一堂に会していた。

 筆者は、その司会進行役という名目で会議に参加していたが、実質的には「部門長の脇で議事録をまとめる」という役割であり、最終的な決定の権限は部門長が握っていた。会議は、現状の報告から始まった。売り上げの状況、顧客の数、引き合いの推移、チラシの具体例から利益予測まで、さまざまなデータが提出された。かれこれ1時間程度たっただろうか。ひと通りの報告が終わると、部門長は口を開いた。

「何か考えがある人は発表せよ」

 沈黙のうちに時間が過ぎた。そして5分ほどたったときのことだ。20代後半とおぼしき若手社員が、手をそろそろと挙げた。

「よろしいでしょうか」

 部門長がうなずくと、彼はゆっくりと話し始めた。

「ありがとうございます。では、意見を述べさせていただきます。このサービスの調子が良くない理由は、『キャッチコピー』にあると考えています。私が思うに、このサービスの本来のターゲットは『300人以上の企業』です。しかし、現在のキャッチコピーはどちらかといえば『100名程度の零細企業』向けになっており、それが引き合いの少なさの原因と思われます」

 部門長は先を続けるように促す。

「したがって、私が考える案はキャッチコピーを次のように変えることです」

 そして、彼は自分の考えてきたキャッチコピーを披露した。だが、会場からは苦笑が聞こえるのみだった。それもそのはず、彼が考えたキャッチコピーはいかにも稚拙なものであり、どうひいき目に見ても、集客できるようなクオリティではなかったからだ。すかさず、会場からは批判の声が上がる。

「問題はキャッチじゃないでしょう。価格ですよ」
「キャッチというのは間違っていないように思うが、このキャッチではねぇ……」
「なぜこのキャッチが300名以上向けなのか、理由がわからないんだが」

 質問や批判が相次ぎ、彼は落ち込んでいるようだった。だが、部門長は言った。

「非常に良い意見だ。私は気づいていなかった。検討事項に加えよう」

 その後、会議は「キャッチコピー」のみならず、価格設定、ターゲットの再設定、営業の方法まで、多岐にわたって話が展開し、新しい施策がまとまり会議は終了した。

率先力が人を成長させる

 筆者は会議が終わったあと、部門長に質問した。

「なぜ、あのキャッチコピーを『良い意見』とおっしゃったのですか? 素人目にも、クオリティは高くないように感じましたが」

 すると部門長は言った。

「仕事で一番偉いのは誰だと思います?」
「権限を持っている方でしょうか?」
「権限を持っていてもダメな人はダメです。どんな仕事でも、一番偉いのは『最初に案を出す人』なんです。批判なんて誰でもできます。しかし、『最初に案を出す』のは勇気もいるし、何より皆から馬鹿にされないように一生懸命勉強しなければいけません。だから、仕事では最初に案を出す人を尊重するのが当たり前です」

 筆者はそれ以来、さまざまな会社で観察を行い、仕事をするときは常に「まず案を出す」ことがいかに重要かを多く見ることができた。そして、率先力が人を成長へ導くことを目の当たりにしたのだ。

 実際、「若いうちはどんどん失敗すべき」と述べるベテランは多いが、どのように失敗すべきかを教えてくれない人が多いのではないだろうか。筆者は、率先して意見を述べることが失敗の仕方を教えてくれるように思う。皆の前で恥をかき、何度も問題に取り組み直すうちに、うまい失敗の仕方を覚えるのだ。

 だから今では、若手から「仕事ができるようになるためには、どうすればいいですか?」という質問を受けたときには、おせっかいながら必ず「最初に案を出せるようにがんばること」と回答するようにしている。
(文=安達裕哉/経営・人事・ITコンサルタント)

安達裕哉

安達裕哉

経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。世界4大会計事務所のひとつである、Deloitteに入社し、12年間経営コンサルティングに従事する。1000社以上の大企業、中小企業にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。自身の運営するブログ「Books&Apps」は月間PV数150万以上。


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