そこで、ふと不謹慎ながら、どのくらいの確率でこういった被害に遭うのだろうと思い、厳密には正しくないと思いますが、イメージをつかむために全国の住宅火災の発生件数と世帯数(1世帯1住宅という仮定のもと)から推計してみました。
・住宅火災(2013年1~12月) 1万3621件(消防庁より)
・世帯数(13年1月1日現在) 5554万9282世帯(総務省統計局より)
上記の数字から、住宅火災は1年間に4078件に1件発生し、その発生確率は0.024%であるといえます。
今回の推計に用いた数字はあくまで「住宅火災」なので、ビルや工場なども含めた「建物火災」まで考慮すると、近隣火災で被害に遭う確率はもっと高くなります。やや乱暴な数字ではあるものの、出火の当事者のみならず延焼被害に遭うことも含めると、思っていたより可能性が高いことをあらためて認識しました。
火災保険加入率は5割以下
次に気になったのは、どのくらいの世帯が火災保険に加入しているのだろうということです。調べてみましたが、インターネットでもそのままズバリのデータは出てきませんでしたが、日本損害保険協会のホームページに損害保険料率算出機構からの出典として全国の「地震保険の世帯加入率」と「火災保険への地震保険付帯率」というものを見つけました。
地震保険は、火災保険に加入したうえで特約として付帯することになっているので、「地震保険の世帯加入率」を「火災保険への地震保険付帯率」で割り戻せば、「世帯の火災保険加入率」が算出できます。
14年の「地震保険の世帯加入率」は28.8%、「火災保険への地震保険付帯率」は59.3%なので、「世帯の火災保険加入率」は48.56%と考えられます。
最近の分譲住宅では、住宅ローンを借りる際に火災保険への加入を要件にしていることが多く、民間の賃貸住宅でもほとんどの物件は契約時に火災保険への加入を条件とされています。そうすると、持ち家で住宅ローンを完済している世帯や公的機関の賃貸住宅などでは、未加入割合が多いのではないかと推測されます。
およそ1年間に4000件に1件の割合で火災が起きているにもかかわらず、半数以上の世帯が火災保険に加入していないということは、やはり怖いことです。
火災の責任については、明治32年に施行された失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)というたった1文の法律で、その失火者(火元となった者)に重大な過失(重過失)がない場合は、損害賠償責任を負わないと定められています。
この場合、「重過失」の定義が難しいのですが、余程の不注意でないと責任を負わないと考えて差し支えなく、重過失か否かについては個別の事案ごとに裁判等で判断されます。
つまり、自分が近隣からの火災で被害を受けても、火元となった人に「弁償しろ」などと言えないということです。そのようなとき、火災保険に入っていなければ、他人の責任で火災が発生して被害を受けても、自宅は自分で補修もしくは再建しなければなりません。失火した本人にとっては救いのある法律ですが、周りにしてみれば被害の分だけ損をします。
火災の被害はさまざまですが、近隣からの延焼で自宅が全焼した場合、その被害額は甚大です。火災保険に加入していなければ、30年以上の住宅ローンを組んで購入した家が消失した挙げ句、ローンだけが残ってしまう事態もあり得ます。
筆者は火災保険に加入していたので、今回の被害に際して少額ではありましたが保険金が支払われました。まだ火災保険に加入していない方は、思っている以上に火災の被害に遭う可能性はあるのだと認識をあらため、加入を検討なさることをお勧めします。
(文=秋津智幸/不動産コンサルタント)