2月9日、俳優の渡辺謙が早期の胃がんで内視鏡手術を受けていたことが発表された。渡辺は「先日受けました人間ドックで早期の胃癌を見つけて頂きました。幸い早い段階のものでしたので、早々に手術を受け、現在療養させて頂いております」とコメントしている。
渡辺はツイッターで、妻の女優・南果歩の勧めで人間ドックを受けたことを明かし、早期発見について「この段階での発見は奇跡、点検は大事ですわ」と語っている。
渡辺は当初、アメリカで再演されるミュージカル「王様と私」に3月1日から出演予定だった。しかし、治療のために初日が同17日からと、遅れることが発表されている。ツイッターでは「素晴らしい手術だったので、回復も順調です」「ゆっくりとしっかりと準備します」と語っており、大事には至らなかったようだ。
現在56歳の渡辺が患った胃がんとは、どのような病気なのだろうか。新潟大学名誉教授の岡田正彦氏に聞いた。
「つい最近まで、胃がんは、がんの中でも死亡する人が飛び抜けて多い病気でした。多くの日本人が『がん』という病気を知ったのは、黒澤明監督の映画『生きる』(東宝)によってでしたが、その主人公が患った病気も胃がんでした。そのため、今日でも胃がんという病気は、日本人の心の中で大きなウエイトを占めているわけです。
胃がんは検診で見つかることもあれば、『胃の痛み』『吐き気』『食欲がない』『体重減少』などの症状がきっかけになることもあります。やはり気になるのは、『胃がんを宣告された人のうち、どのくらいが助かるのか』ということでしょう。
『がん診療連携拠点病院:2007年生存率統計』によれば、『胃の粘膜やその直下にがんが留まっている(早期がん)』と診断された人が、5年後も生きている割合は93.6%。一方、すでに肝臓などに転移していた人の場合は、わずか7.1%だったそうです。
胃がんの特徴のひとつは、死亡率(年齢調整死亡率)が過去50年の間に日本人男性で約3分の1、女性では4分の1に激減していることです。ただし、これはがん検診が普及したためではなさそうです。なぜなら、胃がん検診が日本で普及する以前から、死亡率は下がり始めていたからです。また、検診受診率の変化と胃がん死亡の推移を照らし合わせても、まったく一致しません」(岡田氏)
胃がんの原因は「塩分の過剰摂取」と「喫煙」
また、岡田氏は「かつてはアメリカでも、胃がんは最も多い病気のひとつでした」と語る。
「しかし、食品の保存技術が進歩し、塩分摂取量が減るにつれて、ほぼなくなっていきました。いまだに胃がん死亡が多いのは韓国、日本、中国など、塩分摂取の多い国に限られています。しかし、その日本でも、塩分摂取量が減るにつれ、胃がん死亡も激減しているのです。
なお、日本ではピロリ菌が胃がんの原因とされ、『薬によるピロリ菌退治法』が流行しています。しかし、海外で行われた『信頼できる4つの学術調査』によれば、いくらピロリ菌退治をしても、胃がんの発生率は変わらないことが示されています。
胃がん検診自体にも「過剰診断被害」という問題があり、寿命を延ばす効果は認められていません。胃がんの原因は、明らかに『塩分の摂りすぎ』と『たばこ』のため、自分の努力で予防を心がけることが大切です」(同)
死亡率が激減しているとはいえ、胃がんを遠ざけるために、塩分の過剰摂取や喫煙は控えたほうがよさそうだ。
(文=編集部)