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榊淳司「不動産を疑え!」

住宅ローン&家購入で失う、人生の自由と選択肢…仕事や学校選びに甚大な制約

文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト

 したがって、そういう転居をする場合なら、次の住宅は買うのではなく借りればいい。賃貸住宅を借りるのであれば「買い替え特約」などない。不動産会社も仲介を厭わない。

 ところが、多くの人は住宅の所有にこだわる。なぜだろう。

 マンションなどの住宅を「所有する」ことにこだわると、日本国憲法で定められた「居住の自由」を謳歌できないばかりか、人生におけるさまざまな機会を逃すことにもつながりかねない。

 たとえば、転職。「○○市の○○社が○○職を好条件で募集している」といった、自分にとってとても魅力的な求人があったとする。あるいは「君の能力が生かせるわが社にぜひ」と、誘ってくれる経営者の会社が、今住んでいる場所から通えないところにあった場合はどうするだろう。家族を説得して、引越しを前提に転職を考える人の割合はどのくらいだろう。

 今の住まいが賃貸だったら、半分以上の人が心を動かされるのではないか。しかし、持ち家でしかも住宅ローンを返済中だったら、おそらく引越してまで転職しようと考える方は全体の2割以下ではないだろうか。

 住宅ローンを抱えるということは、生き方をかなり保守的にしてしまうのだ。

子どもの将来にも制約

 子どもの学校についても、似たようなことがいえる。

 たとえば、中学受験などで志望校を選ぶ場合、どうしても通学範囲の制限が生まれる。中学校1年生の子どもを通学させるとすると、せいぜい片道1時間半までだ。できれば1時間以内にしてあげたい。なかにはいくつも県をまたいで通う子どももいるだろう。進学校になると、新幹線通学の子もいる。ただ、そういうケースはかなりイレギュラーだ。

 親の通勤圏内であれば子どもの通学しやすい街へ引越す、というのはどうだろう。これも賃貸住宅に住んでいれば比較的簡単だ。引越しを前提に志望校の範囲を広げることで、子どもの未来への可能性も広がることになる。

 しかし、住宅ローンを返済中であれば、引越しを前提にした志望校の選択は現実的ではなくなる。「自由」が狭まっているのだ。

住居と人生

「人生を変えたいのなら、住む場所を変えろ」ということをよく聞く。また、アメリカの経済学者であるエンリコ・モレッティが著した本に、邦訳のタイトルが『年収は「住むところ」で決まる』というのがある。けっこう話題になった。住む場所を選ぶことで、人生の可能性を広げられる、という主張だ。

榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト

榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト

不動産ジャーナリスト・榊マンション市場研究所主宰。1962年京都市生まれ。同志社大学法学部、慶應義塾大学文学部卒業。主に首都圏のマンション市場に関する様々な分析や情報を発信。
東京23内、川崎市、大阪市等の新築マンションの資産価値評価を有料レポートとしてエンドユーザー向けに提供。
2013年4月より夕刊フジにコラム「マンション業界の秘密」を掲載中。その他経済誌、週刊誌、新聞等にマンション市場に関するコメント掲載多数。
主な著書に「2025年東京不動産大暴落(イースト新書)※現在8刷」、「マンション格差(講談社現代新書)※現在5刷」、「マンションは日本人を幸せにするか(集英社新書)※増刷」等。
「たけしのテレビタックル」「羽鳥慎一モーニングショー」などテレビ、ラジオの出演多数。早稲田大学オープンカレッジ講師。
榊淳司オフィシャルサイト

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