日本人が開発した医療機器は、世界レベルでみると数少ない。そんななか、心房細動の治療で「高周波ホットバルーン焼灼法」が4月から保険適用となります。これは葉山ハートセンター(神奈川県葉山町)の佐竹修太郎副院長が開発し、つくり上げた医療機器です。
注目されているのは、日本人が開発したという点だけではありません。その治療成績の良さです。463例の治療成績がアメリカ心臓協会に発表されています。それによると、1回の治療で発作性心房細動が87%、慢性の心房細動が70%治り、薬物治療が必要なくなったのです。
心房細動は心臓の心房が1分間に350~500回程度興奮するもので、不整脈のひとつ。心房細動を放置しておくと脳梗塞や心不全に結びついてしまうだけに、恐れられている疾患です。
治療は「薬物療法」と「非薬物療法」。非薬物療法の基本的治療としては「カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)」が行われています。これは脚の付け根の大腿静脈から電極カテーテルを左心房に挿入し、心房細動の引き金になる異常電位を発生している肺静脈口の周囲をピンポイントで焼灼します。100回程度は焼灼するので、治療時間は長くかかってしまいます。
注目の高周波ホットバルーン焼灼法は、カテーテルアブレーションと患部へのアタック方法は同じ。ただ、肺静脈口でバルーンを大きく膨らませ、肺静脈口に押し当てます。バルーンを膨らませるときは生理食塩水を送り込んで行い、高周波加熱で65度にして全体を焼灼してしまいます。血栓ができたり、孔が開いたりすることもなく、治療時間も短く、安全性でも注目されているのです。
昨年11月には「冷凍凝固バルーン法」が一歩先に保険適用になっています。こちらは焼灼するのではなく、マイナス50度で冷凍凝固するのです。ただ、こちらはバルーンのタイプが2種類しかなく、それに合わない肺静脈口の大きさであれば適用になりません。
さらに、保険適応とはいえ、国内の30医療施設でしか行われていません。高周波ホットバルーン焼灼法は広く全国の循環器の専門病院で行われるとともに、肺静脈口の大きさにも関係することはありません。