大学卒業時点で借金6百万…過酷な奨学金返済で貧困転落続出 貧困で路上生活の若者も
ブラック企業が横行する日本。これでは、安倍晋三政権が掲げる日本再興戦略「JAPAN is BACK」 ならぬ「JAPAN is BLACK」ではないか。しかし、そんな暗闇に満ちた社会で一生懸命に働く当事者たちはまぶしい光を放っている。本連載では慶應義塾大学経済学部教授の金子勝氏が、そんな当事者の人びとにスポットを当てて、ブラックな社会の実態に迫る。
今回金子氏は、『釜ヶ崎から』(ちくま文庫)の著者で、野宿者の支援を行っている「野宿者ネットワーク」代表の生田武志氏に、
・路上生活者の支援の現状
・路上生活をする若者が増えている原因
などについて話を聞いた。
奨学金の返済ができない若者たちが路上生活者に
金子勝氏(以下、金子) 生田さんは、現在どのような活動をされているのですか。
生田武志氏(以下、生田) ひとつは、野宿している、あるいは野宿生活になりそうな生活困窮者の支援です。最近は、ギリギリまで我慢してから相談に来る人が多いです。たとえば、被災地で仕事をしていたが、大阪に帰ってきたら仕事がなくなり、家賃が払えなくなったという人がいました。釜ヶ崎(大阪市西成区北部の通称)から電車で300円ぐらいかかる市からのSOSの電話だったのですが、そのとき50円しか持っていないと言うので、私が迎えに行きました。寝る場所もないので、西成区役所に一緒に行って相談しました。その後、鬱状態になり自傷して病院に入院。そのような経緯を経て生活保護を受けることになりました。
なお、2008年末から09年初頭に東京・日比谷公園で開設された派遣村以降、生活保護が受けやすくなりました。いわば生活保護が適正化されたので、野宿者の数は減っています。
金子 野宿からアパートに入ることで生活は改善されますか。
生田 野宿者ネットワークの活動の半分は、野宿からアパートなどに入った人への支援です。生活保護を受けて住居に入り職を探そうとしますが、安定的な仕事はなかなか見つかりません。介護職だけはあります。なぜなら介護の現場はひどいので、みんなすぐにやめてしまうからです。50~60歳の人でも介護の学校に通い、介護ヘルパーになるというケースは多いです。
奨学金が重荷となり生活が困窮する若者たち
金子 最近、若者からの相談が多くなっているようですね。
生田 その大半は、奨学金返済を抱えています。正社員であれば返せますが、非正規雇用では月3~4万円の返済は困難です。奨学金を返済するために家計が圧迫され、毎月少しずつ借金がたまってしまう人が多いのです。大学や専門学校を出た段階で、500~600万円の借金を抱えています。返済の猶予措置があることを知らない人もいます。