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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

東京、震災時の重大リスク浮上…土地所有区分調査の進捗率わずか2割、復興遅延必至

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
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東京、震災時の重大リスク浮上…土地所有区分調査の進捗率わずか2割、復興遅延必至の画像1「Thinkstock」より

 2011年3月11日の東日本大震災から5年が経過した。被災地の復興はまだまだではあるが、それでも人々の震災の記憶は薄れかかっていた。しかし、4月14日に熊本地震が発生し、震災に対する認識を再確認させられた。被災者の方々には、心からお悔やみを申し上げたい。

 さて、震災発生後に大きな問題となるのが復興だが、この復興作業を行うにあたり意外と問題になるのが、土地の所有区分の問題だ。震災により元の状況がわからないほどに被災しているわけだから、自分の土地はどこからどこまでで、隣の土地との境界線はどこだったのかを明らかにするだけでも大変な作業だ。

 特に東日本大震災では多くが津波被害によって流され、目印もない状態になってしまったのだから、たまったものではない。そのような状況のなかで、国土交通省によると、津波被害にあった宮城県名取市は測量関係費を約1000万円も節減し、さらに復興工期が約1年短縮できた。

 一体なぜなのか。その答えは、「地籍」にある。名取市は「地籍調査」が実施済みであったため、復興への早期着手が可能となったのだ。

 人に戸籍があるように、土地にも地籍というものがある。参議院の発行する「立法と調査」の「進捗が遅れている地籍調査の現状と今後の課題」によると、地籍調査は国土調査法の定めにより、国交省が所管する国土調査の一つで、土地登記簿上での一個(一筆)ごとの土地について、その所有者、地番、地目を調査するとともに、境界の確認、面積の測量を行い、現況にあった正確な地図(地籍図)および台帳(地籍簿)を作成するもの。一方では、地図を含めた土地に関する記録は不動産登記法に基づき、登記所に管理されている。

 調査の主体は市町村で、調査時期や地域について計画を策定した上で、対象となる地域住民に対して、調査内容や必要性などについて説明会を行う。その上で、公図や登記簿などの資料を参考に隣接する土地所有者の立会いの下、一筆ごとに土地の範囲や境界を確認し、所有者が合意した土地の境界を決定、確認された境界の測量を行い、その結果をもとに正確な地図(地籍図)を作成し、土地の面積を計算する。

 これらの結果をもとにした地籍図と地籍簿は、都道府県知事の認定を受け、登記所に送られ、地籍簿をもとに登記簿を修正し、地籍図が登記所備え付けの正式な地図となる。この一連の調査は、おおむね3年程度かけて行われる。

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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