金正恩朝鮮労働党第一書記率いる北朝鮮の度重なる挑発行為に日米韓が手を焼いているが、北朝鮮のむき出しの敵意は中国にも向いているようだ。1月の核実験に対する国連経済制裁決議では、中国は最後まで渋っていたが、米国の提案に折れたといわれている。以降、「血盟関係」と呼ばれていた両国の仲は冷えきっているが、ここにきて北朝鮮側が中国に“経済テロ”を仕掛けてきている。
中国ニュースメディア「今日頭条」の3月31日付記事によると最近、北朝鮮製の精巧な偽人民元紙幣が流通しているという。これまで中国市場には、主に台湾製や広東省潮州製の偽人民元が流通していたが、これらよりも高度な技術で印刷され、本物の紙幣と比較しても遜色ないほど色、つや、手触りなどが飛躍的に進化しているのだという。肉眼での判別は非常に難しく、一般的な商店で使用されている紙幣識別器もすり抜けてしまう。さらに、中国国内の一部の銀行ATMでも使用できてしまうという。
北朝鮮版の偽人民元の主な特徴は、まず使用されている紙が本物と極めて近い高級紙(草棉などが原料)で、耐久性や手触りなどが本物と同じように再現されている点だ。また、この偽札の製作に用いられるカラー印刷技術は、世界トップレベルといわれているスイス・ヘキサゴン社が開発した測定器を使用し、本物の色味を忠実に解析・再現しているといわれる。また、高温高圧定型技術により色彩が長期間にわたり色褪せず、耐水性にも優れているという。
そして、これまでの偽札に比べて最も優れている点は、マイクロ文字と磁性インクの使用だ。人民元の紙幣にはコピー防止のためマイクロサイズの数字が刻まれているが、北朝鮮版の偽札はこのマイクロ文字を見事に再現し、磁性インクのインク量や磁性体の量も本物同様に再現しているという。
北朝鮮の偽札といえば、まず思い浮かぶのが1980年代末に登場した「スーパーK」と呼ばれる米100ドル紙幣だろう。これは朝鮮労働党の直接の指示で製作され、在外北朝鮮公館を通じて各国の金融市場に大量に流通させられていた。アメリカ政府が回収しただけで5000万ドル(約60億円)を超えたというが、実際はその10~20倍の量が流通したと推測されている。その後も「スーパーZ」「スーパーアルファ」など、北朝鮮は次々と精巧な偽ドル札を製造していたとされる。このような偽札製造技術を持つ北朝鮮の標的は、国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)に採用され「準国際通貨」となった人民元に移りつつあるようだ。