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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

「親の介護」で権利振りかざし&離職する社員、対応誤り業務混乱&紛争抱える会社激増

文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ代表、保険・介護・医療ジャーナリスト

 部門閉鎖を理由に、兵庫県の姫路工場から茨城県の霞ヶ浦工場への転勤命令が下った従業員のなかに、精神病を患う妻の世話や母の介護をしなければならない2人の従業員がいた。彼らは、ともに「転勤すれば妻や母の症状が悪化する可能性がある」などとして、転勤命令を拒んで、姫路工場内の別の部署への異動を希望した。しかしながら、企業側は従業員の希望を受け入れず、従業員に退職か、転勤かの選択を迫った。従業員側は、このままでは業務命令違反として懲戒解雇を言い渡されるおそれもあるとして、霞ヶ浦工場に勤務する雇用契約上の義務がないことの確認及び配転命令後の賃金支払を求めて提訴したものである。

 ここで、配転命令権について説明したい。

「配転命令権とは、企業が従業員に対し、配置転換又は転勤を命じる権限である。一般的には、就業規則等に『業務の都合により、配置転換、転勤を命じることがある』といった配転条項が置かれていることが多く、個別契約で勤務場所・職種を限定されているなどの事情がない限り、企業側には従業員に対する配転命令権が認められる」(鈴木氏)

 では、同裁判において、企業の配転命令が有効か否かについては、どういった基準が用いられたか。

「一般的に、配転命令の有効性が争われる裁判では、以下の表に示す(1)から(4)が主な争点となる。(1)配転命令権の存在が認められる場合でも、(2)業務上の必要性が存しない場合、又は業務上の必要性が存する場合であっても、(3)不当な動機・目的をもってされたものであるとき、もしくは(4)労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき等の特段の事情がある場合には、配転命令は権利濫用として無効とするのが判例である」(鈴木氏)

(1)“配転命令権”の有無(就業規則・雇用契約などに、“配転命令権”の規定が盛り込まれているか否か)
(2)業務上の必要性の有無
(3)不当な動機・目的の有無(人選の合理性)
(4)従業員に、「通常甘受すべき」程度を、著しく越える不利益を負わせるものかどうか(「通常甘受すべき」とは「やむを得ないものとして仕方がなく受け入れるべき」という意味)

 こうした基準を踏まえて、先ほどの判決を振り返る。

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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