「親の介護」で権利振りかざし&離職する社員、対応誤り業務混乱&紛争抱える会社激増
介護離職が取り沙汰されているが、果たして仮に国が仕事と介護の完璧な支援策を制定しさえすれば、介護離職はなくなるものだろうか。筆者は、即座に「NO!」と答える。なぜなら、今現在もそれなりの制度は存在するが、制度はあっても知識がないばかりに介護離職に追い込まれる方が相当数いらっしゃることを実感しているからだ。制度はあっても企業も従業員も知識が不十分なままであれば、職場でのさまざまな介護トラブルは今後ますます増加するかもしれない。
今回は、前回の「介護離職の原因と企業防衛の必要性」に続き、企業と従業員それぞれの観点から介護トラブルに対する“王道の防衛法”を検証したい。
知ることこそが防衛法の第一歩
2009年に改正された育児・介護休業法を受けて、厚生労働省が次のような指針を告示していることは、ご存じだろうか。
「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(09年厚生労働省告示第509号/以下、指針)
この指針は、育児・介護休業法が介護休業の申出又は取得を理由とする「解雇その他の不利益な取扱い」を禁止しているのを受けて、具体的に「解雇その他不利益な取扱いとなる行為」を例示しているので紹介する。
イ.解雇すること。
ロ.期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。
ハ.あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。
ニ.退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。
ホ.自宅待機を命ずること。
へ.労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること。
ト.降格させること。
チ.減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。
リ.昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。
ヌ.不利益な配置の変更を行うこと。
ル.就業環境を害すること。