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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

外国人マネーが日本の不動産を手離し&売り始めている…不動産市場、後退局面入りか

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
外国人マネーが日本の不動産を手離し&売り始めている…不動産市場、後退局面入りかの画像1「Thinkstock」より

 2016年6月23日、英国EU離脱は「そんなことは起こるはずもない」と思っていた世界中の金融関係者を驚愕させ、絶望の淵に落とし込み、欧州の秩序が今後もEUを中心に保たれていけるのか、多くの不安を世界中にばらまくことになった。

 英国はユーロ市場の中心としてその機能を果たしてきた。ロンドンのシティには世界中の金融機関が店舗を構え、シティの繁栄は英国がいまだに欧州で絶大な影響力を誇示する証でもあった。

 さて、英国のEU離脱は、英国不動産マーケットや今のところ「対岸の火事」のように静観している日本の不動産マーケットにどのような影響を与えることになるであろうか。
 
 EU離脱後の英国不動産関連のニュースは冴えない。1825年に創業、英国の大手生命保険会社であるスタンダード・ライフ・グループの資産運用会社、スタンダード・ライフ・インベストメンツの不動産ファンド(資産総額:29億ポンド、約3950億円)の取引が停止された。同ファンドは英国内の高級商業施設に投資するファンドで、運用利回りは3.86%程度。

 この知らせに呼応するかのように7月5日、同じく英国大手生命保険会社アヴィヴァ傘下の、アヴィヴァ・インベスターズが運用するREIT(不動産投資信託:資産総額18億ポンド)の解約が停止となった。さらに英国大手生命保険会社プルーデンシャル傘下のM&Gインベストメンツが運用するプロパティ・ポートフォリオ(資産総額:約44億ポンド)が解約停止となった。

 6日になってもこの流れは変わらず、ヘンダーソン・グローバル・インベスターズが運用する英国第2位の公募不動産ファンドの解約も停止。これで英国内の不動産ファンドの約半数が解約停止となる事態を招いている。

 オープンエンド型のファンドでは、解約に備えた一定の資金をプールしておかなければならないが、英国のEU離脱によって、今後英国が欧州における金融の地位を大きく下げる可能性を嫌気して投資家が解約に走る結果、資金が不足して、物件を売却せざるを得なくなるのではないかという懸念が急速に膨らんでいる。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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