10日に投開票された第24回参院選は大方の予想通り、自民・公明の与党が圧勝し改選議席の過半数を超え、「改憲勢力」と目される国会議員数が参院全体で3分の2に達した。野党では民進党が議席を大幅に減らし、共産党やおおさか維新は躍進した。国民はアベノミクスの継続に承認を与えたといえるだろう。
安倍晋三首相は大勢判明後のテレビ出演で「大胆で包括的な経済政策」を実行することを発言し、補正予算の策定を急ぎ、また「給付型奨学金」などの具体的な政策にも言及した。
参院選後の日本経済には大きく3つのリスクが立ちはだかっている。ひとつはイギリスのEU離脱や新興国経済(中国、ロシアなど)の減速、そしてアメリカ経済の先行き不透明など世界経済の失速リスクである。特にイギリスのEU離脱ショックは大きく、株価や為替レートを大きく不安定化させたままである。すでに昨年8月における中国経済の大幅失速を懸念したチャイナ・ショックから日経平均株価は約30%近く下落し、為替レートはドル円で120円台から100円を切りかねない水準にまで落ちてしまった。
ただし株価に関しては、参院選後明け11日の日経平均は大幅な上昇で始まっている。これはアベノミクス継続への期待が込められたものだろう。この勢いが続くかどうかは、今後の世界経済の失速リスクの大きさにかなり依存している。
特に米国経済は、雇用情勢がピークアウトしたといわれている。7月の雇用統計では、失業率は4.9%(前月比0.2%の悪化)、非農業部門の就業者数は市場予想を大幅に上回る28万7000人だった。先月の就業者数が低迷したのに比べれば改善しているようにみえるが、必ずしも安定はしていないというのが多くの識者の見方だ。
特に物価上昇率をみると、前年比1%を若干上回る水準である。米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)のインフレ目標2%には、ここ2年近く到達していない。そのため賃金の伸びが抑制されたり、雇用創出の大きな制約になっていると指摘する経済学者もいる。FRBが現状の利上げスタンスをとり続けることは、米国経済の先行きの不透明感を増幅し、それが世界経済にも甚大な影響を及ぼすと懸念されている。